卵子の老化についてメディアで報じられるようになって以降、早く産むことが強く勧められるようになりました。でも、本当に40歳は手遅れなのでしょうか?

「子どもは早く産むにこしたことはない。35歳過ぎたら手遅れ」「40歳過ぎたら絶望的」――そんな話があなたの心に重くのしかかっていませんか? 女性も大学を卒業し、キャリアを磨くことが当たり前になりました。だとすると、勉強も仕事も恋も結婚も出産も、23歳から30歳過ぎまでの短い時間に詰め込まなければ、人生の帳尻は合わなくなってしまいます。

イラスト=akayo Akiyama

もし、40歳でも出産が可能なら、生き方はずいぶん変わるでしょう。仕事も勉強もがんばり、気に入らない男には別れを告げ、そうして少し大人になった30代後半で、人生の決断をすればいい。これなら何とかなりそうです。もしそれが、可能なら……。ここでは、産婦人科のお医者さんも気づかない現実の話をしていきます。

世にはびこる「40歳を過ぎたら絶望的」という説は正しいのか。人口動態のデータから不妊治療の実績に関するものまで、さまざまなデータで検証していきます。

「40歳で7%しか出産できない」は誤解

【誤解1】報道でよく使われる「40歳の出産率は7%」のデータは、不妊治療をしている患者さんのデータ(グラフ1参照)
【誤解2】でも、40歳以上で出産する女性の9割が自然妊娠による出産(グラフ2参照)

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【左】グラフ1:不妊治療における年齢と生産分娩率【右】グラフ2:40歳以上の出産4万人の内訳

●老化はそこまで早くない

40歳では出産が難しいという場合、おおかたその根拠は、不妊治療のデータをもとにしています。たとえば、「40歳で7%しか出産できない」という数字。報道でもよく使われますが、これは、人工授精1回当たりの出産に至る確率(グラフ1)です。そこには3つの誤解が含まれています。

(1)人工授精は何回もトライできること。複数回行えば確率は上がります。

(2)40歳で不妊治療をしている人は、通常より重度な患者が多いこと。30代で治療を始めた場合、症状が軽い人たちは、早い段階で妊娠し、治療を終えていきます。そのため、40歳で残る人たちは、症状が重い人の割合が高くなっているのです。

(3)これらの数字はすべて、不妊治療に関するものであること。治療をせずに出産した人のことは含まれていません。そして、実は40歳を超えて出産している人は、自然妊娠のほうが圧倒的に多いのです。現在日本では、年間約4万人の人が40代で出産しています。そのうち、不妊治療患者は3600人。9割以上は自然妊娠なのです。

確かに、女性の体は年をとると、子どもを産みづらくなっていくのは事実です。しかし、それは、40歳で絶望的というほど早くはありません。そのような状態になるのは、45歳を過ぎてから、というのが現実でしょう。