高学歴という肩書を手にしても、仕事や生活が保証されるわけではない。ウーマン編集部が独自に行った1000人調査では、大卒・院卒でも下流に陥る女性が3割を超えた。崖っぷちをさまよう高学歴女子の今を追った。
女の幸せは結婚で決まり、「勝ち組」「負け組」と騒がれたのはひと昔前のこと。昨今はエリート男性と出会い、“セレブ”な結婚生活を送っていても、夫の浮気やリストラでたちまち転落していく人がいれば、離婚後の苦難をバネに起業した人もいる。かたや“貧困”女子を自負しながらも、夢を追って一人で闊歩する女性たち……。その分かれ道で、彼女たちは何を選び、どんな幸せを求めたのか?
絵に描いたような優雅な生活から一転
●大橋由実子さん(仮名)49歳
結婚相手に求めたのは、人柄や容姿ではなく「家柄」だった。自営業の家庭に育ち、女子大を卒業後、大手企業に就職。バブルなOL生活も満喫し、その先に憧れたのは“セレブ妻”におさまること。20代の終わり、友だちの紹介で知り合ったのは官庁に勤める男性。旧財閥の血筋を引くスマートな彼にひかれた。
「結婚生活に夢はなかったんです。でも、子どもは欲しかったから最後のチャンスかと……」と大橋さん。
結婚後も共働きで都心に一戸建ての新居を購入。長男の出産を機に家庭へ入り、やがて娘も授かる。かわいい2人の子どもの母となり、キャリア官僚の夫、愛犬と暮らす日々。そんな“セレブ妻”の優雅な生活も、長くは続かなかった。
育った環境や価値観も違う夫婦は、結婚当初からすれ違いが多かった。派手な夫は家庭を顧みず、朝帰りが頻繁になる。ほどなく浮気が発覚。給料の大半は女性に貢ぎ、家計に入れていたのは最低限の生活費だけ。住宅ローンの返済も苦しくなった。
夫に愛想は尽きたが、子どもがまだ小学生だったため離婚を踏みとどまり、自宅で飲食店を始めようと思い立つ。ひそかにためていた貯金で改築し、シェフも雇って開店したが、それが転落への第一歩だった。
最初は口コミも手伝ってにぎわったが、次第に客足は遠のき、運転資金のため借金を重ねた。「貯金もはたいていたので、店にしがみついてしまって」と省みる大橋さんは、負債も2000万円ほどに膨らむ。3年も経たずに店を閉じ、返済にも追われて働きづめの日々が続いた。
40代になっての求職は厳しく、新聞広告でどうにか見つけたのは催事場のパート勤務。しかしそれでは足りず、早朝はスーパー、夜はファミレスとかけもちしたこともあった。さすがに体はつらかったが、亡き母への思いが支えになったという。
「私の母は重い病気を患い、私が小学生のとき余命1年と告げられながらも、数年間生きてくれました。母を亡くしたときは心にぽっかり穴があいて苦しかったけれど、気丈に生きようとする母の姿を見ていたから、私も子どもたちのためにがんばろうと思えたんです」