子宮頸がんと子宮体がん

●子宮頸がん:およそ9割が性交渉により感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)に関連。喫煙も危険因子に。最近は一部の型のHPV感染を予防するワクチンが使用可。
●子宮体がん:およそ8割が女性ホルモン(エストロゲン)の継続的な刺激による発生といわれる。肥満、閉経が遅い、妊娠・出産経験がないなどの場合、発症リスクが上昇。

近年、子宮から膣にむかう管の部分にできるがん――子宮頸けいがんの発症が20~30代前半で増加しています。

Q.自主的に受けたことのある「がん検診」は?(複数回答可)

子宮頸がんの約9割はセックスを感染ルートとしたHPV感染が原因。普通に性生活を営んでいれば、生涯を通して5人に4人が1度は感染します。

幸い、子宮頸がん検診の精度は高く、がん化する前の異常な細胞(異形成)を検出できます。異形成のほとんどは自然に治癒しますが、一部は「がん化」するため、異形成が見つかった場合は、定期検査でリスク管理が必要です。

がん化直後であれば、子宮頸部だけを切除する手術でほぼ100%治癒します。また、この時点なら赤ちゃんを育てる子宮そのものは無事ですから妊娠・出産も大丈夫。子宮頸がんは若いからこそ、こまめな検診によるリスク管理が必要ながんです。

子宮の中に生じる子宮体がんは閉経前後の40代後半~50代で発症が増加します。女性ホルモンのエストロゲンが関与しているため、妊娠・出産経験がない、閉経が遅い、肥満(脂肪細胞でエストロゲンが産生されます)などが重なると発症リスクが上昇します。

女性である以上、発症リスクは免れません。せめて過度な肥満を避けてリスク軽減を心がけましょう。

「30代、40代の女性は家庭と仕事の両立を求められストレスフルな毎日を送っていることでしょう。検診も忙しさにまぎれて先延ばしにしてしまいがちですね。本来なら社会の仕組みから変わるべきですが、ご自身でもワーク・ライフ・バランスを見直してみてください。がんを含めた病気に対する一番のリスク管理になるはずです」

中村清吾(なかむら・せいご)
1982年千葉大学医学部卒業、2005年聖路加国際病院ブレストセンター長(初代)・乳腺外科部長。10年6月から現職。患者を中心とする乳がんのチーム医療の第一人者。最近は根治性と美容面の両立を目指した乳房手術や遺伝性がんの診断・予防法の確立に注力している。日本乳癌学会理事長、NPO法人日本HBOCコンソーシアム理事長。好きな言葉は「日々是倖日」。

イラスト=イナキヨシコ