このPRESIDENT WOMAN Onlineと同じ、プレジデント社の雑誌『PRESIDENT』では、2015年3月2日号で『女の口紅はなぜ、赤いのか?』という特集を組んだという。それは赤みを使って一種の性的興奮状態を再現することで、より社会的に有利になるからとの結論だったようだけれど、その女の口紅の「赤」は、女が自分の生を鼓舞する赤であることもあると、記しておきたい。阪神大震災の後、くたくたになった被災女性たちの気持ちを、1本の口紅が救ったというエピソードが、ずっと心に残っている。女性たちは鏡に映った自分の顔に血色が戻ったのを見て、「大丈夫、やっていける、生き抜いていける」と自分に言い聞かせることができたのだと言う。先日がんで短い生涯を閉じた女優が、死の前にマスコミの前へ現れた姿にも、同じ生への鼓舞を感じた。静かな、内なる満ち足りた平和が、やせ細った彼女を彩る化粧と華やかな衣装から放たれていた。私も苦しかった20代、顔が上がらず、表情を失い心が死んでいたある日、ふと口紅を塗った瞬間に涙が止まらなくなった経験がある。女という「型」は、与えられた型であるようでいて、そのひとを救うこともある。
女には、女である自分自身や、ほかの女にまつわる、さまざまな感情がある。それを見つめていきたい。この連載ではさまざまな女性たちの人生を切り取り、“ウーマン”について語っていけたらいいな、と思いながら、私は今日も不似合いな赤い口紅を塗っている。
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。