グローバル企業へのスプリングボード
シンガポールは単にASEANへのゲートウェイだけではない。その先の、さらに巨大な市場とつながっている。
「例えば日本企業が中国で事業展開する場合、両国の歴史的な事情が立ちはだかる恐れがあります。その点、シンガポールには中国語を話し、中国の文化を知悉し、中国ビジネスに精通した人材が揃っています」
また、これからの有望市場であるインドへのアクセスも容易なのだ。
「シンガポールとインドは緊密な通商関係を築いており、さまざまな貿易協定が結ばれています。インド系シンガポール人も多く、現地ビジネスに通じた人材、パートナーが豊富なのです」
さらにシンガポールでは、建国以来、輸出重視の国家戦略を掲げ、さまざまな国々との自由貿易協定(FTA)を積極的に結んできた。日本が2002年に初めてのFTAを含む初の経済連携協定を締結した国がシンガポールだったことは注目に値する。シンガポールはFTA締結国数で世界トップクラス。それだけにシンガポールの港湾・空港は圧倒的な利便性を誇り、世界トップクラスの物流ハブとなっている。国土としては小さいが、実質的な経済圏、貿易圏にまで視野を広げると、とてつもなく大きな可能性を秘めている。
こうしたシンガポールには多くの日本企業が進出している。製造業だけでも住友化学、セイコー、村田製作所、ヤマザキマザックなど日本を代表するメーカーが進出。村田シンガポールなどは現地で約1000人以上も雇用するなど、一大生産拠点を確立している。
また、自転車部品で知られるシマノ、技術力で知られる化学メーカーのデンカなどは、シンガポールに拠点を持ったことをきっかけに、グローバル企業へと成長した。
中規模ながらキラリと光る技術を持つ企業にとって、シンガポールは東南アジアの成長を取り込みながらグローバルカンパニーへと飛躍する格好の場なのである。
「これからはとくにロボット、ICT、3Dプリンティングなどの分野でグローバル・リーダーの座にある日本の中堅企業に、シンガポールを活用していただきたい。確かにビジネスコストは安くはありませんが、政治的不確実性に悩まされることもありません。きちんと先が読める確実性と安全性があるのです。これから伸びようとしている企業が初めて海外進出する際、リスクや不確実性を最小限に抑えることは非常に大切だと思います。建国当初から日本企業の進出を支援してきた私たちEDBが、全面的に支援します。ぜひシンガポールをグローバル企業へのスプリングボード(跳躍台)として活用してください」
シンガポール経済開発庁(Singapore Economic Development Board : EDB)は貿易産業省傘下の政府機関で、「外資系企業誘致のワンストップセンター」として、進出に際してのさまざまなサービスを提供。日本には、東京に事務所を構え、日本企業のシンガポール投資をサポートしています。
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グローバル企業への“GATE WAY”シンガポール
3 シンガポールはグローバル企業へのスプリングボードになる