着々と進展する再生可能エネルギー。地方自治体が主導する例なども増え、環境面、経済面などのメリットに注目が集まっている。その価値をより高めるために必要な意識やかかわり方について、法政大学地域研究センター特任教授の白井信雄氏が語る。
人類のエネルギー活用は
新たな段階に入った
地球温暖化、資源の枯渇や供給不安といった危機に際して、再生可能エネルギーが注目を集めています。しかし人類の歴史を考えれば、化石燃料や原子力の利用が始まったのはごく最近のこと。近代を迎えるまで、人類は薪などによる火の利用、水車や風車などの道具の活用、さらに牛や人の労働力といった再生可能エネルギーにより、暮らしに必要なエネルギーをまかなっていたのです。
この近代までの時期を、エネルギー利用の第1段階としましょう。続いて産業革命をきっかけに石炭の利用が開始され、人類のエネルギー活用は第2段階に入ります。この段階では再生可能エネルギーも並行して活用されていました。しかし石油が普及すると、活用・保存両面での利便性から石炭や再生可能エネルギーは大量の石油に取って代わられることになります。エネルギー活用の第3段階です。
そして近年、エネルギー危機や東日本大震災をきっかけとして、脱石油、脱炭素、脱原発、脱中央依存の動きが高まり、石油や原子力が再び再生可能エネルギーに置き換えられる「逆代替」が進んでいます。そのさなかにいる私たちには気付きにくい部分もありますが、エネルギー利用の第4段階が到来したといっていいでしょう。
実際、エネルギーに対する個人のとらえ方も徐々に変化しています。これまで、エネルギーは多くの人にとって「与えられるもの」「自分の意思では制御できないもの」でした。しかし、家庭向けの太陽光発電システムやスマートハウスなど、個人がエネルギーをつくり、選び、賢く使うための多彩な選択肢も登場し、それが着実に利活用され始めています。より主体的にエネルギーにかかわっていける環境が整ってきたことで、「それは選べるものである」と個人の意識も変わってきているのです。
「エネルギー自治」の
効果を高めるために
個人と再生可能エネルギーとのかかわり方を整理してみると、大きく3つに分けられます(図参照)。
1つ目は「エネルギーをつくる」こと。太陽光発電システムなどを活用して自らエネルギーを創出したり、再生可能エネルギー事業へ出資するといった方法です。2つ目の「エネルギーを使う」では、蓄電池を導入したスマートハウスで暮らしたり、電気自動車を利用したり、グリーン電力を購入するといった方法が挙げられるでしょう。また住まいの通風や採光を工夫するなど、自然のエネルギーをそのまま活用する方法もあります。そして最後は、「エネルギーを生かした地域づくりへの参加」です。