小ぎれを接ぎ合わせた手作りの座蒲団
好いものとは何か。それは、たくさんの小ぎれを接ぎ合わせて作った座蒲団であった。新しく買ったのは、中に入れる綿だけであった。
私はまだ、月給の残りを、毎月のように母に渡していた。それがあんまり少なくなっては困るのであるが、しかし、佐伯のものを作るのは別であった。
このきれいな接ぎ合わせの座蒲団が、どんなに男を喜ばせることが出来るか、私には分かっていた。私はその日、少し暗くなってから出掛けた。荷物がちょっと大きいので、人目については困るからである。
「今晩は」とそとから声をかけ、上がるとすぐ、その座蒲団を拡げて見せた。
どしゃぶりの雨夜の命令するような低い声
佐伯はにっと眼で笑っただけであった。
佐伯はとても、口数の少ない男であった。このことも、また、私が佐伯を好きになったことの一つであった。
不思議なことであるが、佐伯はまだ一度も、私のことを好きだと言ったことはない。しかし、家へ訪ねて行っても、来るな、とは言わない。それどころか、待っているとしか思えないこともある。
或る夜、ふいに雨になったことがあった。
どしゃ降りの雨になり、なかなか止まなかった。私は半年前、あの別の男とやはり雨の夜、私の家で一緒に寝たことを、忘れてはいなかった。
「よう降りますのう」と私は言った。「もうちっと、待って見ても宜ございますかいのう。小降りになりゃしますまいかのう」と私はまた言った。
「お泊まりんされ」と低い声で、しかし命令するように言ったと思うと、佐伯はいきなり押し入れをあけて蒲団を出し、そこに敷いたのであった。
男はランプの灯を消した。そして、一言もものを言わずに、するりと私の横に寝た。それは、私にとって、始めての経験ではなかった。あの、別の男と寝たあのときと同じように、佐伯の体を押しのけた。しかし、それは、男にもっと強く抱擁することを催促する結果にしかならなかった。