出会いはあるのに、結婚できない理由
ここで少し視点を変えてみましょう。
出会いの総量という意味では、現代はかつてないほど豊かな時代です。マッチングアプリを開けば無数の候補が現れ、スワイプひとつで新しい出会いが始まる。「出会いがない」という時代は、ある意味で終わっています。
しかしその一方で、結婚できない人は増えている。
なぜでしょうか。
一つの答えとして、こう考えることができます。婚活とは、無数の中から誰かを探すことであると同時に、無数の中から誰かに探されることでもある、と。
出会いが自由になりすぎた結果、多くの人が「探す側」としての婚活を進めています。より良い条件の人を、より効率よく見つけること。しかしどれだけ探しても、相手もまた無数の選択肢の中から誰かを探しています。
「本気を出せばいつでも出会える」という感覚は、裏を返せば「今じゃなくてもいい」という感覚でもあります。出会いがいつでも手に入る環境が、皮肉にも「本気を出すタイミング」を永遠に先送りさせているのです。
アプリの「いいね」が与えてくれる「探されている」感覚は、その渇望を一時的に満たしてくれます。しかしそれは、本当の意味で「選ばれた」わけではない。だからいくら「いいね」をもらっても、満たされない感覚が続くのです。
婚活で消耗していく人の多くは、探し疲れているのではなく、探され方を知らないまま、探し続けているのかもしれません。
プロフィール添削の利用者は男性が9割
この「いいね」と現実のギャップについて、自身もマッチングアプリで7年間婚活を続けた経験を持ち、現在はマッチングアプリ専門家としてアプリのプロフィール添削なども手掛けるおとうふさんに話を聞きました。
おとうふさんがアプリ婚活を始めた当初、使用したアプリの数は撤退済みのものも含めて約30。主に併用していたのは3つで、7年間で実際に会った人数は300人以上にのぼります。
獲得した「いいね」の数は当時の仕様上正確に追えないことが多かったものの、もっとも多かった2016年には月2000件以上の「いいね」を獲得し、住んでいた県内では2位の数字を記録していたといいます。
「自分は人気会員なのだから、同じく人気の会員と結婚できるはずだと思っていました。でも会っても会ってもうまくいかず、途方に暮れていた時期がありました」
転機になったのは、自身が提供するアプリのプロフィール添削サービスの利用者の9割以上が男性で、女性優位なアプリの構造に気づいたことでした。
「女性一人とやりとりするのも難しいという男性ユーザーはたくさんいて、顔も見ずに手当たり次第『いいね』を送らざるを得ない状況の人もいると知って衝撃を受けました。自分に魅力があるから人気になっているのではなく、構造的にそうなってしまうだけだと理解したんです」
そこから「人気な男性」ではなく「自分と合う男性」「自分を好いてくれる男性」に目を向けられるようになったことが、婚活がうまくいき始めたきっかけだったといいます。
そして現在の市場は、おとうふさんが婚活していた当時よりもさらにシビアになっていると指摘します。
「ユーザー数が増えた分、人気の男性会員の倍率はより上がり、また女性は以前より『いいね』をもらいやすくなっています。やりとりする気もないままとりあえずマッチングする男性も多く、いいね数という『錯覚資産』が膨らみやすい構造になっている。今は、私が婚活していた頃以上に女性が勘違いしてしまいやすい環境だと思います」