スマホ管理よりすべきこと

「でも、そのことを知った保護者が強く抗議しました。男子生徒相手でも関係ない、と。先生が生徒と個人的につながる状態そのものが問題だ、と。ほかの生徒とは交換していないのか、なぜその子だけなのか、何をやり取りしていたのか、全部疑われました」
「男子生徒でも、ですか」
「ええ。それでも保護者は納得しませんでした。むしろ、“男子だから問題ないという発想自体がおかしい”とまで言われました」

書影
西岡壱誠『カスハラ化する保護者たち』(星海社新書)

教頭はそこでいったん言葉を切った。

「そのとき、学校として痛感したんです。善意であっても、実務上の便利さがあっても、教師と生徒が私的な連絡先を交換すること自体が、もう時代に合わないんだと。問題が起きてから説明しても遅い。だから今は、やはりLINE交換はNGだ、という整理になっています」

G先生は、そこまで聞いて少しだけ肩の力が抜けた。自分が冷たいのではなく、線引きが必要なのだと、他人の口から、しかも過去の失敗を踏まえて言われると少し救われる。

「ただ」と教頭は続けた。

「無関係です、で終わらせることもできません。教室で顔を合わせる相手同士なら、もう学校の人間関係になっています。ですから、学校がやるべきなのは、スマホそのものを管理することではなく、学校生活に支障が出ている関係を立て直すことです」

その言い方は明快だった。G先生はメモを取りながら、ようやく自分のやるべきことが少し見えた気がした。