「超尖る個性」は、過剰な同調圧力から生まれた

念のため言及しておくと、これらのトレンドは、誰もが真似できるものではありません。あくまで、おしゃれに自信のある一部の人たちに限られます。同じことをしても、人望のある人がやれば称賛され、そうでない人がやれば陰口を叩かれてしまう。だから多くの若者は、むしろダイエットや美容整形、「浮かない格好」へと流れていきます。

では、この「超尖る」現象は、若者の健全な自己表現なのでしょうか。僕の見方は、少し複雑です。

本当に自分の好きなものを追求していい時代なら、そんな極端なことをやらなくてもいいはずです。それなのに、極端なことをやる人たちが突如として一定量出てきた。これもまた“個性の圧力”だと思うのです。結局みんな、何かのスタイルで個性を出さないといけなくなっている。

SNSやAIは、本来、個人の自由を広げるはずのものでした。好きな情報を選び、診断で自分に合うものを知り、AIで理想を作り出す。ところが実際には、パーソナルカラー診断や骨格診断が「あなたに似合うもの」を細かく規定し、AIが似たような理想像を量産し、ありのままのSNSが逃げ場をなくしました。結果として、過去最高レベルの同調圧力が生まれてしまっている。

スマホ画面に並ぶ、生成AIアプリのアイコン
写真=iStock.com/Kenneth Cheung
※写真はイメージです

個性を出さないとSNS上で埋没するし、ルッキズムと戦わないと整形せざるを得ない。その圧力が極度に強すぎて、極端に個性を出す人たちが出てきた。本当の意味での自己表現というより、昔にはなかった過剰な圧力によって、生み出されざるを得なかった――冷静に分析すると、そういうことなのではないかと僕は思っています。

若者は“板挟みのプレッシャー”の中で生きている

最後に、この世代を理解するうえで、いちばん大切だと思うことを述べます。

僕たち大人は、たいてい「どちらか一面」だけを見てしまいます。痩身薬や高額整形のニュースを見て「今の子はルッキズムがやばい」と眉をひそめる人。あるいは、娘や妻がXGやHANAに夢中なのを見て「個性の時代でいいなあ」と感心する人。この記事を読んでいる方も、どちらかに心当たりがあるのではないでしょうか。

でも、両方とも真実なのです。しかも、別々の人がそれぞれ言っているのではなく、多くの人が両方を心の中に同時に持ってしまっている。ここが、いちばん大切なポイントだと思います。

XGやHANAに憧れる。でも、彼女たちには歌やダンスの実力、強烈な個性があります。外見だけ真似ても「何もできない自分」になるだけだから、なりたくてもなれない。一方で、高額整形や痩身薬には「ビジュアルは羨ましいけれど、そこまでやるのはおかしい」と感じている。なりたくてもなれない理想と、なりたくない理想。その二つを同時に抱えて、板挟みのプレッシャーの中で生きているのが、今の若者たちなのです。