BeRealやsetlogで「ありのまま」が評価される傾向
では、なぜこの反発が「今」起きたのでしょうか。大きいのは、SNS環境の変化です。
インスタ映えの時代なら、一生懸命メイクして、加工アプリを使えば、SNS上では美しくなれました。ところがここ1〜2年、BeRealやsetlogといった“加工できないSNS”が若者の間で広がってきました。その場で撮ったものをそのまま投稿する仕組みで、写真の加工は一切できません。加工したり着飾ったりしても、どうにもならないものが評価される土俵に変わったのです。
加工が効かないなら、盛る意味は薄れます。“自分より可愛い子”の投稿を見ても「どうせ加工でしょ」と思えていたのが、ありのままを映すSNSでは通用しません。先ほどのルッキズム風刺画の大流行は、ある意味で「インスタ的な価値観が終わった」ことを象徴する出来事だったと僕は思っています。
もちろん、若者がインスタをやめたわけではありません。ただ、温度感と実際に使っている時間は、BeReal、setlog、そしてAIへと移ってきています。“加工ではもうダメ”ということを、鋭く突きつけられた瞬間だったのです。
“AI超えのインパクト”が求められるように
そしてもう一つ、重要なのがAIの存在です。
いまや、行っていない旅先にいる写真も、推しとの2ショット写真も、AIが簡単に作ってくれます。理想の自分を、いくらでも画像で生成できる時代です。だからこそ、リアルでものすごくインパクトのあるものが、“逆張り価値”として大きくなっているのです。
考えてみてください。自分の写真を送れば、お歯黒にした画像なんてAIですぐ作れます。でも、リアルの場で歯が真っ黒な女性が目の前を歩いていたら、やっぱりすごいインパクトですよね。野球場に行った写真も、雪山の写真も、AIで作れてしまう。だからこそ、本物のお歯黒の女性が実際に街を歩いている方が、はるかに衝撃的なのです。AIを超えるものといったら、インパクトのあるリアルなものなのです。
さらに、SNSが「見られる場」としての価値を落としていることも大きいと思います。すごい写真が誰でも簡単に作れるようになった結果、1投稿あたりの価値が下がりました。AI上では何でも作れるけれど、AI以外では承認されにくくなっている“自分の素の姿”。その承認欲求を、もう一度取り戻すための手段、とも言えるかもしれません。
お歯黒や眉消しは、リアルでもSNSでも一貫しているからこそ意味を持ちます。SNSだけで眉のない写真を上げても「メイクを忘れたのかな」と思われるだけです。でも、リアルでもSNSでも本気でやっていれば、「自分の主張でやっているんだ、かっこいい」と受け取られる。ここが肝心なところです。