スポーツドリンクではダメな理由

もしかしたら、熱中症時にもスポーツドリンクがいいと思っている人もいるかもしれません。でも、スポーツドリンクは塩分が少なく糖分は多く、体内への水分吸収率が経口補水液よりも低いため、熱中症時の水分+塩分補給には不適切です。

体内で水分が不足すると血中ナトリウム濃度が上がり、喉の渇きを感じます。水を飲むことで血中ナトリウム濃度は元に戻ります。一方、水やお茶のような塩分を含まない飲み物を大量に飲み続けたり、大量の発汗後に水ばかり補給したりすると、血中ナトリウム濃度が下がります。ナトリウムが少なくなっても、水分不足のときの口渇のような強い欲求は起こりません。体はADH(抗利尿ホルモン)の分泌を抑えて尿の量を増やします。

つまり、余分な水を体外へ排泄することで、血中ナトリウム濃度を正常に戻そうとするのです。低ナトリウム血症は軽症では症状がないこともありますが、そのまま進行すると脳浮腫が起こり、頭痛、吐き気、倦怠感が現れ、さらに重症化すると意識障害やけいれんを起こすことがあります。こういう理由で、水分と塩分が急速に失われた場合は、その両方が一度にバランスよく摂れる経口補水液の方が、水やお茶、スポーツ飲料や清涼飲料水よりも優れているのです。

また、特に乳幼児において、日頃からスポーツ飲料やイオン飲料を「ミルクよりも健康にいいのではないか」「栄養価が高いのではないか」「水分補給に最適」と誤認し、乳児が体重増加不良と低ナトリウム血症で入院した事例が何例もあるので注意が必要です。スポーツ飲料は、少し大きくなってから「清涼飲料水(ジュース)」の一つとして飲ませるにとどめましょう。

症状がひどい場合は必ず医療機関へ

というわけで、誰かが熱中症になったら、すぐに涼しい部屋へ移動させ、経口補水液を飲ませましょう。軽度なら水分は水やお茶、清涼飲料水でもいいですし、おやつとしてお煎餅などの塩分が入っているものを食べるのもいいですね。中等症、つまり頭痛やめまいがしたり、吐き気がしたりしてつらいときには、経口補水液を飲むか医療機関にかかりましょう。

熱中症による頭痛がひどいときは、市販の鎮痛薬を飲めば、頭痛を和らげることができます。ただ、熱中症の場合、体温が上昇することで脱水や循環不全などが起こった結果、頭痛がするもの。鎮痛薬は根本的な治療にならないうえ、NSAIDs(エヌセイズ)は腎血流量を減らすので飲まないほうがいいでしょう。どうしても飲むならアセトアミノフェンがいいですが、いずれにしても水分と塩分の摂取が優先です。また、暑い中、頭痛と倦怠感のある人がアセトアミノフェンを飲むことによって少し楽になり、スポーツや作業を続けるのは危険なのでやめましょう。

涼しい環境で、経口補水液を飲んでもよくならない場合は、大人なら内科、子どもなら小児科を速やかに受診してください。熱中症が進行すると意識障害、多臓器不全になり、亡くなることがあります。毎年、熱中症による死亡が報道されますが、ほとんどが高齢者です。子どもの場合は亡くならなくても体調悪化が早く、重篤になりやすいので気をつけましょう。意識がない、呼びかけに反応が少ないなどの場合は、最初から氷水で冷やしながら救急車を呼んでください。

熱中症は、正しい知識があれば予防でき、万一なってしまっても重症化を防ぐことのできる病気です。「熱中症かな?」と思ったら、早めに涼しい部屋で休む、経口補水液を飲む、と覚えておいてください。