子どもの運動環境とのズレ

近年の子どもの生活スタイルは、かつてと比べて

・運動する時間の減少
・遊ぶ空間の制約
・仲間関係の変化

と言われている。

いわゆる「三間」(時間・空間・仲間)の喪失が指摘され、子どもの運動時間の減少や、屋外で遊ぶ機会の減少が多くの調査でも指摘されている。

スマホを凝視している女の子
写真=iStock.com/ZeynepKaya
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こうした環境の中で、従来と同じ測定項目を実施することが、どこまで実態に即しているのか。

測定項目と生活実態の関係

例えば、体力テストの種目の一つに「ソフトボール投げ」がある。

物を遠くに投げる能力を測定するものだが、現在の子どもたちの生活環境を考えたとき、その経験機会は大きく減少している。とりわけ都市部では、広い空間で自由にボールを投げる機会そのものが限られている。安全面や環境の制約から、日常生活の中で遠くに投げる動作を繰り返す場面は多くない。

野球を筆頭とした球技に取り組んでいる子どもは、こうした動作に慣れており、同じ年齢でも経験機会の差がそのまま記録に反映されやすい種目といえる。

こうした点を踏まえると、測定されている能力が、現在の生活環境の中でどの程度意味を持つのかという視点も必要になる。

測定方法と安全性の観点

体力テストの種目の中には、「20メートルシャトルラン」のような種目もある。これは持久力の測定として用いられているが、実施時期(気温など)や体調の影響を受けやすい条件の中で行われることもある。

また、安全面から見ると、学習指導要領には持久走(2~6分程度、自分のペースで無理なく走る力を養う)が設定されているが、シャトルランは時間も負荷も含めて、ここに全く当てはまっていない危険な運動でもある。特に高い記録を出す児童・生徒の場合、走り終わった直後に倒れ込むことも少なくない。子ども自身の意思と裁量で、自分を限界まで追い込むことも、適当に終わらせることもある運動なのである。

こうした点を踏まえると、測定そのものの妥当性だけでなく、実施方法や安全面の配慮についても、あらためて検討する余地がある。

「今の時代に必要な体力」とは何か

さらに問われるべきは、そもそも何を測っているのかという点である。

現在の体力テストは、主に数値として測定可能な能力を対象としている。しかし、現代において求められる身体の使い方は、必ずしもそれだけではない。

・継続して体を動かす習慣
・仲間と関わりながら活動する力
・無理なく続けられる運動との出会い

こうした要素は、単発の測定では捉えにくい。

「今の時代に必要な体力とは何か」という問い自体が、十分に整理されないまま、ただ測定を続いても意味がない。