恐怖の正体とは
「トイレの個室に閉じ込められる感覚に怯えたり、外出先のトイレにいるたくさんの人に恐怖を感じたりするお子さんもいます。個室に1人になっている間に、お父さんやお母さんがいなくなってしまうのではないか、と不安を覚えるお子さんもいます。
心がけてほしいのが、トイレに限らずに、お子さんが怖がったり、不安がったりしているときに、何が怖いのか、何が不安なのか、知ろうとすること。トイレが怖いと言っても、恐怖や不安の原因はお子さんにとってまったく違うんです」(遠藤先生)
なぜ、外のトイレがイヤなのか。以前、Kに聞いたことがある。
「『ボー』ってなるでしょ。Kはね、あれがこわいの」
“ボー”とは、商業施設などのトイレに設置されているハンドドライヤーの音らしい。しかし先述した病院のトイレにはハンドドライヤーはなかった。
「ここのトイレには、ボーはないよ」と説明したが、「かえる」と譲らなかった。
かつて耳にしたハンドドライヤーの音が、あまりにも恐ろしくて、Kのなかで外出先のトイレとハンドドライヤーが結びついているのかもしれない。遠藤先生は言う。
「大人の目線では何が怖いのか、理解しにくい面もありますが、一歩踏み込んで恐怖の理由を理解して受け止めてあげる。そうしたプロセスでお子さんは安心感を持つんです」
克服のためにかけるべき言葉
では、どのようにトイレの恐怖を克服すればいいのか。
「大袈裟に考えなくてもいいと思いますよ」と遠藤先生は答えた。
「ハンドドライヤーの音が聞こえてもそばにお父さんやお母さんがいて、自分が守ってもらえると思えれば、徐々に克服できるようになるはずです。
怖がったときは『一緒にいるよ』『音は怖いけど、痛くないから大丈夫だよ』と話してあげてもいいですし、実際にお父さんとお母さんがハンドドライヤーを使う様子や、音を怖がらない同じ年頃の子どもの姿を見れば、そんなに怖くはないと分かります。それでも音が怖ければ、使わなければいいんだ、と学んでいくのではないでしょうか」
遠藤先生の指摘は、アタッチメントを考える上で重要なポイントだ。
アタッチメントとは、怖くて不安になったときに、特定の決まった人に一緒にいることで、安心感をえて、感情の崩れを調整すること。『安心感が子どもの心を育む』では、アタッチメントの特徴を5つ挙げている。
2、子どもの不安や恐れに応答する力をもつ
3、安全な避難場所と安心の基地という2つの役割がある
4、探索行動を支える基盤となる
5、生涯発達の土台となる



