隣国に比べてもお粗末な日本の現状
韓国では儒教思想が強く、未婚での妊娠は親から認められないという事情のためか、予期しない妊娠をした女性のために全国津々浦々、グループホームが用意されている。そこでは出産までの支援はもちろん、生まれた子の養子縁組の援助や、母親が育てる意思を示した場合は自立できるまでサポートをするなど、女性の孤立を防ぎ、最悪の事態に至らないための居場所や人的支援が整っている。
それに比べて、この国のサポート体制は何とお粗末なことだろう。特に、赤ちゃん縁組・特別養子縁組は民間機関に頼りっぱなしというのが現状だ。
「児相は虐待家庭から子どもを切り離す大きな権限を持っていますが、その一方、家庭の縁が薄く、家庭を奪われた子どもたちに里親制度を使って、家庭・家族を与えることができます。これは、児相の強力な公的役割だと思います。児相は全国47都道府県にありますし、市町村との連携もできています。盤石の体制で行えるはずです。愛知県のように全国の児相で『赤ちゃん縁組』をやるべきと思いますね」
「愛知方式」は萬屋さんが望むように、もっともっと全国に広まっていい。
里親サロンに集う人々
「矢満田さんは、養子縁組・里親当事者の自主交流会も作りました。『愛知方式』で関わった養親さんや子どもと、私たち関係者も参加できて交流できるサロンです。児相職員は、その児相から異動になると、自分が橋渡しをした縁組家族に関わることは通常ありません。矢満田さんは休日、開催される当事者の交流会に参加して縁組家族への支援を続けたのです」
○○ができないと諦めるのではなく、工夫して新しいものを作る、というのが矢満田さんらしい、と萬屋さんは言う。
「最初は5〜6人ぐらいの集まりだったのが、今は100人ぐらい集まっています。特別養子縁組の親子だけでなく、大学の研究者や私のような児相関係者も参加して、いろんなつながりが広がっています。愛着障害、真実告知などをテーマに専門家から学んだり、先輩養親から体験を聞いたりしています。大きくなった養子から話を聞くこともあります」
養親の大きなテーマは「真実告知」。物心がつく時期に産みの親が別にいることを、子どもに伝える。同時に、自分たちが子どもを迎えてどんなに幸せかということも伝えるという。
「真実告知をされた思春期の子どもが養親に『産んでもいないくせに』とか、『親ヅラしやがって』とか、暴言を吐き暴れている話も聞きます。思春期の子どもが暴れるのはしょうがない。『そのセリフよくぞ言ってくれた』くらいの気持ちで構えましょう。ずーっと親子、死ぬまで親子ですから」
「グレて、荒れて、家を出たとしても、帰れる家があるのとないのとでは、安定感が違います。家を出て行った子も、何かあったときには連絡があるようです。子どもたちがこの世の中を生きていくためには、そういうつながりが必要だと思うんです。疲れたときに寄り添ってくれる人や休息できる場所がなく、一人で生きていくのは誰でもしんどいと思います」
取材した日はその後に、萬屋さんがは児相にいた頃に「赤ちゃん縁組」をした子と、面談の予定が入っていた。