危険な暴力行為に走る人は「遊びの経験」が少なかった

ブラウンは研究助成金を確保し、遊びの意味をさらに探りつづけました。殺人をおかして刑務所に入っていた複数の男性受刑者にインタビューをして、彼らのバックグラウンドを、犯罪歴のない対照群の人々と比較しました。同時に、研究者としての職務の一環として、重大な運転違反で有罪になったのちに自動車事故で死亡した人々の経歴をまとめました。

この調査によって、受刑者と違反運転者のあいだの驚くべき類似が見えてきました。どちらのグループも、それぞれの対照群と比べて、幼いころにそれほど遊んでいなかったのです。この発見により、危険行動や暴力行為をする傾向のある人々には、遊びの経験が著しく不足していることが明らかになりました。

喧嘩する子供たち
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ブラウンは次のように述べています。「わたしが研究対象とした殺人者たちのなかに、友達と取っ組み合いの喧嘩をしたことのある人はひとりもいませんでした。こうしたノーマルな範囲での喧嘩や、ときに対立しながらも友達関係を保つ能力というのは、動物にも人間にも欠かせない基本的な要素のひとつなのです」。

社会性を要する遊びについてのこの研究は、アタッチメントと向社会的行動の関連についての研究とよく似ています。幼少期に受けた扱いは、感情を抑える能力や認知能力に大きく影響します。子どもから友達付き合いや遊びを奪うのは、温かい人間関係や健全な脳の発達を阻害するのと同じことです。

もちろん、幼いころに遊び時間が大幅に足りなかった人がみんな大量殺人犯になるわけではありませんが、多くが人間関係を築いたり学習を進めたりするうえで困難に直面します。

遊びを奪われた動物はつがいになれない

哺乳類のほかの種が取っ組み合いの遊びをする機会を取りあげられると、敵と味方を区別できなくなり、ストレスに対して過剰な反応を示し、通常より神経接続に複雑さの足りない小さな脳ができあがってしまいます。実際、遊びは脳の生存本能をつかさどる中枢に深く染みこむのです。

遊びは動物に欠かせない、持って生まれた本能によるもので、小型の哺乳動物の場合には大脳皮質を除去されても、無傷な個体と同じくらい活発に遊びつづけます。しかし成長すると、大脳皮質のない個体は社会スキルを身につけられず、つがいになることができません――愛することができないのです。