動画を見ながら勉強する子どもは危険
図表2は、家庭で平日に動画を1時間以上見ている子どもと、1時間未満に抑えている子どもの勉強時間、睡眠時間と成績との関係を表したものです。偏差値50以上の層がいるところに注目してみてください。
左側の平日の動画視聴1時間以上に注目すると、偏差値50以上は、学習時間が長いところにしか見られません。勉強をすればするほど偏差値が上がるのは、ある意味当たり前です。ところが右側、平日の動画視聴1時間未満のところを見ると、偏差値50以上は学習時間が短いところにも多く現れ、全体として明らかに数も多くなっています。
何と、平日の動画視聴時間が1時間未満の子ども達は、学習時間が短い場合でも成績の伸びがよくなっています。一方、動画視聴1時間以上の子ども達は、たくさん勉強しても成績が平均付近に留まっているのです。
家庭学習中に動画を観ない子どもは、短時間の学習で成績が平均を超えます。一方で、家庭学習中に動画を観る習慣がある子ども達は、3時間以上学習しても成績が平均に届かないという結果となったのです。
動画のながら見は多いですが、学習中に見てしまうと集中力が下がります。勉強をしているつもりでも、机に向かっている時間が長いだけで、実際はほとんど頭に入っていないというわけです。学習時間の見た目の長さではなく、集中して学ぶかどうかが大切なのです。
受験生がスマホに夢中になるメリットはない
ただ机に向かっているだけでも、やろうという気持ちがあるのですから、十分に偉いと思います。けれど、それが向かっているだけになってしまい、学力の向上につながらないのだとしたら、とても残念に思います。せっかくのやる気が報われていないということだからです。その上、好きなことができているわけでもないのですから。
身になる学習は、集中力がポイントです。動画やSNS、ゲームに気を散らさず、集中して一気に終わらせてしまいましょう。そして、終わらせてから自由に好きなことをする。そのようなメリハリこそが大切なのです。
こちらが注目すべき点は、仙台市内の全市立小学校118校、全市立中学校64校、市立中等教育学校1校の小学5年生から中学3年生までの4万人以上の児童生徒を対象とした大規模な調査ということです。調査対象人数の面から見ても、信頼性は高いでしょう。
いくつかの研究や調査の結果をご紹介してきましたが、このような調査は世界中に数多くあります。そしてそのほとんどが、ご紹介したような結果となっています。
一つ二つの調査を見るだけなら、「結果ありきで恣意的な調査研究をしたのでは」と思うこともできます。しかし、世界中でこのような調査があることを考えると、スマホ・ゲーム・SNSの長時間利用と成績には負の相関関係がある可能性が高いと考えざるを得ません。受験生があえて長時間利用をする理由は、何もないのです。
〈出典〉
(※1)文部科学省・国立教育政策研究所。“OECD生徒の学習到達度調査PISA2022のポイント”。2023-12-05.
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2022/01_point_2.pdf# (参照 2025-03-19)
(※2)国立教育政策研究所。“平成26年度全国学力・学習状況調査の報告書・調査結果資料”。2014-08-25.
https://www.nier.go.jp/14chousakekkahoukoku/summaryb.pdf (参照 2025-03-19)
(※3)国立教育政策研究所。“令和6年度全国学力・学習状況調査報告書・調査結果資料”。2024-07-29.
https://www.nier.go.jp/24chousakekkahoukoku/index.html (参照 2025-03-19)
(※4)令和3年度「学習意欲」の科学的研究に関するプロジェクト。(小5~中3)仙台市。
https://www.sendai-c.ed.jp/~oh-ichou/tayori/2022/img20220417_14310250.pdf (参照2025-03-19)



