顧客からの圧倒的な支持は、どのようにして生まれたのか

日本酒の輸出額は2021年以降、400億円を超える規模を維持している。21年より前は200億円台を推移する市場だったことを考えると、ここ数年の輸出額の伸びは顕著といえる。世界的な日本食ブームが後押ししていることもあるが、海外のソムリエに日本酒の魅力を知ってもらう取り組みなど、業界を挙げての地道な努力が実を結んだものと考えていいだろう。

とはいえ、24年度の日本酒輸出額435億円のうち、獺祭だっさいの輸出額だけで56億円にも上ると知れば、海外市場における獺祭の際立った優位性に驚くはずだ。それほどまでに世界中の人を虜にするプレミアムな日本酒は、どのようにして生まれたのか。

獺祭 代表取締役社長/4代目蔵元 桜井一宏(さくらい・かずひろ) 1976年生まれ、山口県周東町(現岩国市)出身。早稲田大学を卒業後、酒造とは関係のない東京のメーカーに就職。2006年、実家に戻る形で旭酒造に入社、常務取締役となる。13年より取締役副社長としてマーケティングを担当、海外進出の礎を築く。16年9月、代表取締役社長に就任、4代目蔵元となる。25年6月には、「株式会社獺祭」に社名変更した。
獺祭 代表取締役社長/4代目蔵元 桜井一宏(さくらい・かずひろ)
1976年生まれ、山口県周東町(現岩国市)出身。早稲田大学を卒業後、酒造とは関係のない東京のメーカーに就職。2006年、実家に戻る形で旭酒造に入社、常務取締役となる。13年より取締役副社長としてマーケティングを担当、海外進出の礎を築く。16年9月、代表取締役社長に就任、4代目蔵元となる。25年6月には、「株式会社獺祭」に社名変更した。

日本酒には大吟醸酒、吟醸酒、純米酒といった酒税法で定められた特定名称酒の他、生酛きもと山廃やまはいなど伝統的な製法を打ち出した酒、さらには特定の酒米や有機栽培といった米の品種や栽培法をアピールした酒など、各社さまざまにブランディングを試みている。よほどの日本酒マニアでもなければ覚えきれないほど複雑な様相を呈しているのも事実だ。

そうした中、獺祭が示したプレミアムな日本酒の答えは明快だった。「誰が飲んでもうまい酒」である。それを実現するために打った手は、業界の常識を打ち破るものだった……と、こんな風に書き進めていくと、一冊の本になるほどのボリュームになってしまうため要点を絞ると、以下の2点が特に画期的であった。

●製品のすべてを酒米の王様といわれる山田錦を使った純米大吟醸酒にしたこと
●伝統的な杜氏制度と年に1度の酒造りをやめ、社員による四季醸造にしたこと

前者は品質を圧倒的に高め、獺祭=うまい酒というブランディングを強化するための「選択と集中」であり、後者は職人の経験に頼っていたノウハウをデータ化し運用する「データドリブン」といったところだろう。さらに通常は冬期のみの酒造りを年間を通じて行うことで、高品質の酒を安定的に出荷し続けることを可能にしたのである。ブラックボックス化しがちな職人の仕事を共有するため、生産現場では紙に出力したデータを誰もが見える場所に貼っておくというのも、お題目だけではない現場に根差したリアルな改革のエピソードといえる。

今回、PRESIDENT祭に獺祭を招へいした理由は、まさにこうしたリアルな変革の一手にある。いわゆる日本的な伝統産業のみならず、中小企業が担うマニュファクチュアリングも高度な技術を持つ熟練技能者に頼る場合が多い。こうした優れた技術・技能者を有する会社が、従来の商流から離れ、永続的に“稼ぐ”ためのヒントが、獺祭の取り組みにあると思えたからだ。

事実、獺祭の販路は拡大し続け、いまや輸出先は30カ国を超えるまでになった。その海外での販路開拓の陣頭指揮をとってきたのが桜井一宏社長だ。父から蔵を受け継ぐと、さらなるブランディングと海外の販路開拓に注力してきた。2023年にはアメリカに生産拠点を設け、前代未聞の米国産日本酒ブランド「DASSAI BLUE」を立ち上げるまでになっている。まさに山口県の小さな蔵だった獺祭が、世界のDASSAIへと飛躍を遂げたのである。

複眼経済塾 代表取締役塾長・渡部清二(わたなべ・せいじ) 1990年筑波大学卒業後、野村證券入社。個人営業に10年、機関投資家営業に12年携わり2013年退社、16年複眼経済塾設立。約2000ページある『会社四季報』の完全読破を継続し今年6月で28年目・111冊達成。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一「四季報」を愛する男」と紹介された。神社検定1級、日本酒検定1級、唎酒師、ウイスキー検定1級。
複眼経済塾 代表取締役塾長・渡部清二(わたなべ・せいじ)
1990年筑波大学卒業後、野村證券入社。個人営業に10年、機関投資家営業に12年携わり2013年退社、16年複眼経済塾設立。約2000ページある『会社四季報』の完全読破を継続し今年6月で28年目・111冊達成。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一「四季報」を愛する男」と紹介された。神社検定1級、日本酒検定1級、唎酒師、ウイスキー検定1級。

ところで桜井社長が蔵を継ぐきっかけになったエピソードがまた素晴らしい。大学入学を機に故郷を離れ、卒業後は東京で社会人生活をしていた。すると都内の居酒屋で実家の酒である「獺祭」を口にする機会が増え、そのうまさにあらためて気づき、蔵に戻ることを決めたのだという。最初は生産現場での下働きも経験し、その後は父の代に開拓した米国、香港の市場拡大に尽力。主にマーケティングの側面から蔵の成長を支え、2016年に4代目の蔵元として会社を率いることとなった。

本講演は、対談形式で獺祭の取り組みを紐解いていく企画とした。対談相手は、複眼経済塾塾長の渡部清二氏に依頼した。証券アナリストの渡部氏は、会社四季報と日本経済新聞から経済動向を読み解き、“伸びる会社”を見極めるプロ中のプロ、そして唎酒師の資格を持つ。まさに経済と酒の“両の目利き”といえる。渡部氏の目を通すことで、獺祭の変革のプロセスを単に日本酒業界の話にとどめるのではなく、地方の企業や中小企業にとっての突破口として、さらには日本経済に夢と活力を与える題材として会場のみなさまと共有したい。

2人のトークに酔えるのは、会場のお客さまのみ。11月のPRESIDENT祭のチケットは絶賛発売中。ふるってご参加ください。

PRESIDENT祭2026に、獺祭・桜井一宏社長と複眼経済塾・渡部清二氏が登壇!

2025年11月26日(水) 講演② 15:05~16:05
イイノホール(東京・霞ケ関)

《変革の一手》
獺祭からDASSAIへ~地方発の産業革命物語

ユネスコの無形文化遺産にも登録された「伝統的酒造り」。その世界に変革をもたらしたのが、山口が誇る名酒・獺祭だ。伝統を革新へと導き、さらに世界へと飛躍する。今年から社名を旭酒造から獺祭(DASSAI)に改め、グローバル展開を目指す桜井一宏社長に、唎酒師でもある経済アナリスト・渡部清二氏が鋭く切り込む。日本の伝統産業が世界に打って出るための秘訣を探る。

開催概要

日時:2025年11月26日(水)
開場・受付 12:30 開演 13:00 終了 19:20(予定)

会場:イイノホール
東京都千代田区内幸町2‐1‐1 飯野ビルディング4F
●東京メトロ 日比谷線・千代田線「霞ケ関」駅 C4出口直結
●東京メトロ 丸ノ内線「霞ケ関」駅 B2出口 徒歩5分
●東京メトロ 銀座線「虎ノ門」駅 9番出口 徒歩3分
●都営地下鉄 三田線「内幸町」駅 A7出口徒歩3分

参加費:1,500円
形式:リアル開催
※オンライン配信の予定はございません。

定員:350名
※定員になり次第、締切となります。

主催:プレジデント社

協賛:ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社、株式会社ディー・エヌ・エー、デロイト トーマツ グループ、日本たばこ産業株式会社、株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社三菱総合研究所 ※五十音順

※イベントレジストをはじめてご利用の場合、来場のお申込みに新規会員登録が必要です。
※既に会員登録をいただいている方はイベントレジストにログイン後、チケットをお申し込みください。

【本講演の留意点】

●動画・写真撮影について
イベント当日は記録・広報等のため、動画・写真の撮影を行います。撮影した素材は弊社・協賛社メディアでの配信や掲載に使用する場合がございます。予めご了承ください。
●参加者の撮影・録音・録画について
会場内の撮影・録音・録画は一切お断りしております。予めご了承ください。
●タイムスケジュールについて
プログラムおよびスケジュールは予告なく一部変更になる場合がございます。予めご了承ください。
●開催について
会場の設備故障や天災、都からの要請など不可抗力の事由により、やむを得ず中止や時間変更になる場合がございます。予めご了承ください。

(文=水谷宗基)

〈PRESIDENT祭2026〉必見の豪華講演!