育児休業給付の制度を変えた

95年から育児休業給付の給付日数(当時は全部で450日)のうち30日、つまり1カ月分は父親もしくは母親のみしか受給できないようになった。この制限は、父親の育休取得を促進する目的で導入されたため、この30日(1カ月)は通称「パパの月」とか「パパ・クオータ(割り当て)」とも呼ばれている。2002年からは育児休業給付の給付日数が480日に延長されるとともに、このパパ・クオータも60日(2カ月)に延長された。さらに18年からは90日(3カ月)に延長された。

この政策の効果については様々な研究がある。制度が初めて導入された95年元日の前後に生まれた子どもの父親の育休を比べてみると、直前に生まれた子どもの父親は子どもが2歳になるまでに平均25日の育休を取ったが、制度導入後に生まれた子どもの父親は子どもが2歳になるまでに平均35日の育休を取ったという。つまり、父親の育休が95年元日を境に平均で10日増えたのである。

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「パパの月」延長で父親の育休の取得日数が増えた

また「パパの月」が2カ月に延長された02年の前後で同様の比較をしてみると、子どもが2歳になるまでの父親の育休の取得日数が40日から47日に増えたという。

ほんのわずかな増加だと思われるかもしれない。しかし、これらの数字はあくまですべての父親の平均だ。たとえば、パパ・クオータ制度がなくても育休を30日以上取ろうと考えていた父親は、制度が導入されても影響をあまり受けなかった。

一方で、それまで育休を全く取らない父親が多かった中卒・高卒の男性や所得の比較的低い男性は、制度が導入されたことで育休を取り始めたことが統計から明らかになっている。その結果、94年生まれの子どもの父親のうち育休を少しでも取得した割合は40%だったが、制度導入後の95年生まれの子どもの父親では、この割合が80%に急上昇する結果となった。

短期的な効果だけでなく、長期的な効果にも着目する必要がある。このパパ・クオータ制度は、政策として大成功だったことは政治の左派・右派を問わず、スウェーデンの多くの人々が認めるところである。というのも、男性に育休の取得を促すことで、スウェーデン社会をより男女平等な社会に近づけていくための好循環の引き金となったからだ。