共働き家庭にとって、子供の発熱時に誰が看病をするかは悩ましい問題だ。スウェーデンに住むデータサイエンティストの佐藤吉宗さんは「スウェーデンには日本のような病児保育はない。親のどちらかが自宅で子どもの面倒を見るのが一般的だ。それを可能にする制度がある」という――。

※本稿は、佐藤吉宗『子育ても仕事もうまくいく 無理しすぎないスウェーデン人』(日経BP)の一部を再編集したものです。

体温計越しの発熱した子供
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子供の看病で有給休暇を使わなくていい

朝7時に息子を起こし、いつものように朝ご飯を食べさせる。すると、どうも様子がおかしい。体を触ってみると少し熱いので体温計で測ってみるとやっぱり熱がある。そんなときは保育所を休ませる必要がある。共働き世帯の場合、日本であれば病児保育に預けられると聞くがスウェーデンにはそのような施設はない。風邪や胃腸炎などで保育所や学校に行かせられない場合、スウェーデンでは親のどちらかが自宅で子どもの面倒を見るのが一般的だ。

その日の仕事は基本的にできなくなるが、日本のように病児看護が目的なのに有給休暇を使う必要はない。また、その分の収入を補う制度が国の社会保険制度にある。「一時的育児休業給付」と呼ばれる制度があるのだ。

これは在宅で病気の子どもを看病したときに国からもらえる給付で、給付水準は給与の77.6%だ(ただし上限がある)。子ども一人あたり年間計120日間まで受給でき(親が2人の場合は片方の親は最大60日間)、丸1日、半日、4分の1日といった受給もできる。この給付は、通常の育児休業・有給休暇・自身の病気休業とは別勘定だ。

子育て世帯の日常には欠かせない「単語」

「自宅で病気の子どもの面倒を見ること」をスウェーデン語でvård av barn、略してVAB(ヴァブ)というが、それを動詞化したvabba(ヴァッバ)は、この一時的育児休業給付を受けながら自宅で子どもの看病をすることを意味し、今ではスウェーデンの子育て世帯の日常には欠かせない単語となっている。

風邪やインフルエンザがはやる2月は、休みを取る親が増えるために2月を意味するFebruari(フェブラーリ)をもじってVabruari(ヴァブラーリ)などと呼ばれる。

うちの息子もだいたい3カ月か4カ月に一度は風邪をひいたり体調を崩したりする。1日ですぐに回復することもあるし、1週間にわたって風邪が続くこともある。私のパートナーは毎朝6時過ぎに家を出て職場に向かうため、子どもが朝7時に起きた時点で体調がおかしいと分かった場合は私がその日、仕事を休んで自宅で息子の面倒を見る。そして、翌日以降はパートナーと交代で休みを取りながら在宅での看病を続ける。