宅配サービスや家事代行サービスも活用

スウェーデンの子育て世帯の暮らしを見ていると、必ずしも自分たちの時間や労力を割いて家事を完璧にする必要はないのだと感じる。日本の感覚ではそれは手抜きをしていると捉えられるかもしれないが、スウェーデンではそう考えられていない。

スーパーの宅配サービスや、家の掃除のような家事代行サービスの利用も増えている。わが家でもほぼ毎週スーパーの宅配サービスを通じて食材や日用品を購入している。そして、余裕ができた時間や週末を使って、子どもや家族との団らん、自分の趣味に時間を費やす。

食品配達
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
※写真はイメージです

かといって、スウェーデン人が怠け者というわけではない。DIYに熱心で、家のリノベーションは自分でやるという人も多い。平均的な所得の家庭でも夏休みに過ごすコテージやレジャーボートを所有し、その活用やメンテナンスにはお金と時間をふんだんに費やす人もいる。

「冷凍食品ばかり」でも幸せを感じる価値観

10年以上前に、日本の大手日刊紙に掲載された、スウェーデン在住の日本人による投書を思い出す。「スウェーデンではみんなが共働きで、家では冷凍食品ばかり。これがほんとに幸せな社会なのか」と嘆く内容の投書だった。しかし、日常生活の中で何を幸せと感じるかはその人の価値観次第だと私は思う。

日本のように手の込んだ手料理を作ろうと思えば時間と労力を要する。専業主婦家庭であれば可能かもしれない。しかし、そのために日本の社会はスウェーデン以上に男女不平等という大きな犠牲を払っている。1日24時間という限られた時間の中で仕事と家庭の両立を実現しようと思えば、何かを優先して何かを削らなければならない。

今のスウェーデン人にとって、家事に極力時間をかけないという選択は、自分たちの選んだ選択肢なのだ。冷凍食品ばかり、夕食が手抜きと一部の日本人の目には映るかもしれないが、だからといってスウェーデン人自身がそれを嘆いているわけではない。