みんなと違うと“ハブられる”教育環境

【上野】小中高校の授業で、先生から「意見はありますか」と尋ねられても、生徒が手を挙げにくい雰囲気があったからでしょう。みんなと違うことを言ってしまったら「ハブられる」(仲間はずれにされる)ような環境で12年間も育ってきて、違うことを言ったら「君は面白いことを考えるね」と褒められた経験がないからです。

意見は「異見」とも書きます。人の言うことに100%同意することなどありえないからこそ、「異見」なのです。小学校から12年間、言いたいことがあっても黙ってきたのか、言いたいことを言って「面白いね。その次も考えてみよう」と言われてきたのかでは、18歳にもなれば人格に大きな違いが出ます。国民性ではありません。

日本の高等教育の最大の問題は、何か。答えは、はっきりしています。それは、入試での選抜方式です。今は正解が一つしかない問いに対する正答率が高い学生を選び抜いています。正答率を争うのではなく、論述を取り入れるなどして、学生の思考力をしっかりと見るような入試問題にすればドラスチックに変わります。

選抜制度が変われば、中等教育にも初等教育にも影響が及びます。ただしそうすれば、私立進学校や受験産業の抵抗が大きいでしょうね。これまでのノウハウが通用しなくなりますから。

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「入試の公平性」に過度にこだわる必要はない

【田原】大学入試でも、正解のない問題を出して、創造力や探究心のある学生を増やしたらいいと思います。でも、大学に採点できる人間がいないという話も聞きます。

【上野】大学教員ならできるはずです。現にフランスは「バカロレア」という大学入学資格試験があって、数日間かけて書かせた論文を評価しています。また、アメリカでは、面接や小論文などで、志願者の能力を総合的に見極めるAO入試が盛んです。

田原総一朗(著)、竹内良和(編集)『東大生は本当に優秀なのか』(毎日新聞出版)
田原総一朗(著)、竹内良和(編集)『東大生は本当に優秀なのか』(毎日新聞出版)

ただ、日本では公平性を巡って文句が出がちです。でも、そもそも入試は、大学側がこういう学生に来てもらいたいと望む人材をとるためにやっているのですから、過度に公平性にこだわらなくてもいいのです。

東大にも推薦入試(学校推薦型選抜)の制度があります。募集人員は100人程度で、合格者の4割ほどが女子です。東大生は約8割が男子なので、女子比率「2割の壁」を推薦では超えています。でも、全体の募集人員約3000人に対して100人では焼け石に水です。

東大は私立の中高一貫校出身の男子学生が4分の1ほどを占めるようです。彼らは、これまで正解のある受験勉強のスキルを磨いてきた子たちです。

今は、こうした勉強が効果を発揮するような入試制度になっています。だから、いっそのこと、AO入試の募集枠を定員の3分の1程度にしたらよいでしょう。

AOで大学に入った学生は、入学後の伸びしろが大きいとのデータもあります。さまざまな活動をやってきた人たちなので、周囲の学生に刺激や好影響を与えることも分かっています。受験一途でやってきた進学校の生徒の知らないことを、たくさん知っています。