学問自体が“男性中心”で、歪んでいる
【田原】なぜ、知識や教養を積んできた学識者らが集まっている「学問の府」で、意図的な男女差別が起きてしまうのでしょうか?
【上野】教養があっても、知識があっても、平然と男女差別やセクハラは意識的、無意識的に行われます。私たちがなぜジェンダー研究を始めたかというと、学問自体が男性中心にできていて、すでに歪んでいると思ったからです。
これまで積み上げられてきた学問は「男子がいかに生きるか」ということの問いと、その答えでした。もちろん素晴らしい知恵が蓄積されていますが、「男子の、男子による、男子のための学問」だったと思います。
【田原】上野さんは京都大の卒業生です。東大と京大の違いをどう見ていますか?
【上野】東大は秀才を育て、京大は異才を育てるような風土があると感じています。私の学生時代の経験を振り返れば、京大は「教育せず、されず」、つまり学生は放し飼いでした。だから、当たりハズレもありますが、学生の発想を抑圧しないので、個性的な人は出てきやすいと思います。
ただ、東大や京大がそれなりに才能ある人材を輩出してきたのは、大学の教育や教師が良かったからではなく、入学してくる学生に、もともと優秀な人材の割合が多かったからだと思います。そういう人材はどこにいても伸びるでしょう。
“一度でも休めばついていけない”訓練を行った
【上野】残念なことに、日本の大学には高等教育のノウハウが確立されていません。18歳からの4年間は、人生の伸び盛りなので、私は学生たちに「自分はこれだけ成長できた」という実感を持って卒業してもらいたいと思っていました。
今あるものを身に付けるだけでは教育ではありません。だから、ゼミ生たちに「誰も答えたことのないオリジナルな問いを立ててごらんなさい」と呼びかけました。
もちろん、前段として学生に一定の負荷をかけ、基礎体力をつけるための訓練をやりました。例えば毎週相当量の指定文献を読んできてもらい、提出物も頻繁に出してもらいました。
一度、授業を休んでしまったら、ついていけないほどです。週1回のゼミのために1週間が回っているようなもので、このレベルの授業が週に三つほどあれば、アルバイトをしている暇なんてないでしょう。
私は学生の考えや発想を一切抑圧しませんでしたので、ゼミには、社会学者の古市憲寿さんや、風俗業界で働く人を支援するNPO法人「風テラス」(新潟市)の理事長をしている(現在は退任)坂爪真吾さんなどユニークな人材が集まりました。



