留学生にとっては“東大=セカンドチョイス”

【田原】近ごろは、東大生は中央官庁のキャリア官僚にならなくなっているそうですね。

【上野】無理もないと思います。激務に比べて給料はそう高くはありません。その代償だったのは「国を動かしている」というプライドでした。しかし、政治家の言いなりにならざるを得ない状況になってしまい、官僚のプライドはズタズタになっています。優秀な人はどんどん逃げていくでしょう。日本は政治家が劣化しても官僚はまともだと思っていましたが、官僚もダメになっては、この国は危ういですね。

日本の国立大学は、文部科学省からの運営費交付金を減らされ、学術的な成果も出づらくなって、大学評価の世界ランキングも下がっています。これまでは、国内の大学市場でトップの東大が親や子どもに選ばれていました。

でも、最近は海外の大学と東大の両方に合格したら、東大を蹴るケースが出ているそうです。これまで学生を国内に引き留めていたのは日本の企業でした。しかし、グローバル化によって、同質性の高い日本人男性によるホモソーシャル(男同士のつながり)な企業組織では、国際競争力がないことがバレてしまい、日本の企業に就職する魅力も薄れています。

留学生を見ていると、よくわかります。学者や学生は国際移動がすごく早くて、メリットのある国や地域にパッと移動します。今、東大に来ている留学生に「どうしてここを選んだの」と聞いてみると、「セカンドチョイスです」と、はっきり言う人が多いですね。「英語圏の学校に行きたかったけれど、行けなかったから」と私の目の前で、堂々と言ってのけます。

ノートパソコンを見ながら3人の学生が話し合っている
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日本のトップレベルでも“正解のない問題が苦手”

――上野氏の発言には「忖度」というものがなく、聞く者を痛快な気持ちにすらさせる力がある。長年、教壇に立っていた東大に対しても、ズバズバとものを言う姿勢は変わらない。きっと、権威や権力による横暴や、不条理に対するセンサーの感度の高さゆえであろう。東大での経験を振り返りながら、日本の教育の行き詰まりを説いていく上野氏は、日本の大学が「ドラスチックに変わる」方法について語り始めた。

【田原】日本人は正解のない問題にチャレンジする教育を受けていないために、創造力に欠けたというのが僕の問題意識です。日本の政治家は、国際会議でもなかなか発言できません。それは、英語ができないからではないと思います。

【上野】その通りだと思います。今の予測のつかない国際情勢を見ても、解決への正解なんてありません。日本人が国際舞台で発言できないのは「シャイな国民性のせいだ」なんて言われますが、そんなものは訓練すれば身につく能力です。

たとえ、ブロークンな(たどたどしい)英語でも主張したいことのある人はしゃべりますし、今は大抵の国際会議は、同時通訳のシステムが整っていますので、自国語でしゃべればいい。

日本社会でトップレベルと言われている東大の学生たちに、私が「これまで誰も答えたことのない問いを立ててごらんなさい」って言ったら、「やったことないからどうすればいいかわからない」と答えが返ってきました。そういう教育を受けてこなかったからです。