親は「最悪の未来」を受け入れよう

では、親御さんはどのようにしたら、古い価値観を手放せるのでしょうか。

逆説的ですが、親御さんがもっとも恐れている“最悪の未来を受け入れる”ことです。

人は「最悪の未来だけは避けないといけない」と思えば思うほど、その不安に強くとらわれてしまいます。例えば「ピンクの象を想像しないでください」と言われると、かえってピンクの象を思い浮かべてしまうように、人の意識はそこに集中してしまうのです。親御さんがその不安にとらわれていると、その思いがお子さんを縛る新たな鎖となり、結果的にその最悪の未来に近づいていくことになります。

そこで、一つのワークを提案させてください。

まず、あなたにとっての「最悪の未来」を具体的に想像します。例えば、「子どもが社会人になれず、ずっとひきこもりのままでいる」という未来だとしましょう。

そして、「子どもが社会人になれず、ずっとひきこもりのままでもいい」と、声に出して言ってみるのです。

きっと、胸がざわざわしたり、嫌な気持ちになったり、暗い気持ちになると思います。それでいいのです。大切なのは、そのときに出てきた感情を否定しないこと。「ああ、すごく不安なんだな」「そんな未来はやっぱり嫌だな」と、その気持ちも声に出して認めてあげてみてください。

そうやって、最悪の未来と、そこから生まれるご自身のネガティブな感情の両方を受け入れることができたとき、不思議と心は軽くなっていきます。

白いシャツの女と青空
写真=iStock.com/AH86
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親子に訪れる不思議な変化

親御さんが古い価値観を手放すことができると、不思議な変化が現れます。

僕の相談者のなかにはお子さんが家庭を出て、祖父母の家で事情があって暮らしていたり、大学生として一人暮らしをしているものの、学校には通わず、親御さんとの距離が生まれているというようなケースもあります。

そのような中でも、親御さんがご自身の心、そしてお子さんの心を縛っていた価値観の鎖をほどいていったとき、これまで連絡が取れていなかったお子さんから、ふと連絡が来ることがあるのです。しかも、その文章がどこか柔らかくなっている――そうした不思議な変化が、実際に起きてくるのです。

親子は、どこかで深くつながっているからこそ、親御さんが変わることで、お子さんにも自然とその変化が伝わっていくのです。そして、それは親御さんから醸し出される、ほんのわずかな「雰囲気」の変化でも十分に伝わるものです。

無理に「いい雰囲気」を作ろうとしても、お子さんはすぐに見抜いてしまいますので、やはり本質的に変わっていくことが何よりも大切になります。

たとえば、親御さんが仕事から帰宅する際の玄関のドアの開け方や、廊下を歩く音、もしキッチンで料理をしていれば、そこから聞こえる音。そういった日常のちょっとした雰囲気を、お子さんは壁を隔てていても敏感に感じ取っています。また、言葉のちょっとした柔らかさや態度の変化にも、自然と気づいてくれているのです。