真の「公正さ」はまだ議論され尽くしていない

賃金格差にあえぐ人に対してアファーマティブに、「格差是正のための取り組みをして学歴をつけてもらいましょう」という方向の支援策はすでにあるにはあります。しかしそれは、「機会の平等」では掬いきれなかった層に対して、結果の不平等へのアクションをとっているものの、「公正」の議論はされていない、とも言えるのではないでしょうか。

もっと平たく言うと、「誰が『正しい』か? 誰が正統で、誰が未熟か?」などという問いが頭のなかを占拠していないか? 自らも、周囲もそうした泥仕合に躍起になっていたら、自覚し、議論の土俵を整える人でありたいものです。

現状の社会構造をオセロの石をひっくり返すがごとく一度に変えることは不可能だとしても、問題の重層的な構造を把握したうえで、対症療法だけではなく、根本治療に向けたムーブメントもつくりたい。それはハックでもチートでもなく、公正さを見据えてのことです。

【ステップ2】複眼的に問題の構造を把握する

「正しさ」に拘泥しないことについて【ステップ1】で述べました。そのうえで、問題の根っこを探るべく、連関し合うシステムとして事象を眺め直すことが肝要です。

重層的、多面的、複眼的であれ

教育社会学を苅谷剛彦氏から学ぶ際に、この言葉を何度言われたかわかりません。「世の中の事象は個々に真空状態にあって、浮遊しているわけではない。連関し合うシステムだ」──と。

システムとしての社会を見たときに、この世の議論の大半が、連関し合う存在のはずなのにある一部だけを捉え、連関を切り離した状態で検討していることが多いのなんの。

勅使川原真衣『学歴社会は誰のため』(PHP新書)
勅使川原真衣『学歴社会は誰のため』(PHP新書)

ゆえにたとえば、学歴と職業との連関に問題が生じていそうだ、と仮にも疑うのならば、それは教育の側からレリバンス(関連性・妥当性)を疑うだけでは不十分だということです。教育から職業へのトランジション(移行)という一連のダイナミクスを捉えるのなら、職業側の問題(たとえば、メンバーシップ型などの雇用システムの前提の問題)を挟み込むように思考することが不可避なのです。

そのうえで「いったい全体、学校から職業への移行に際して、学歴というシグナルで判断し続けていていいのか?」という問いに戻りましょう。

「学校で教えるべきことの問題(職業的レリバンス)もあるでしょうが、それがすべてではない。職業(労働)の側は側で、学問に何か具体的に求められるほど、職務を明確にしてきたんですか?」という問題もさして取り上げられずに残されているわけです。

よって、ここであらためて明らかにしてみたいのは、「仕事って何ですか?」という怖いくらいにプリミティブな問いです。もう少し言うなら、「仕事はぶっちゃけどう回っているんですか?」ということです。