「いくつかの」には1つは含まれるのか
「なぜ?」と思われたことでしょう。それがふつうの反応です。正解がわかったとすれば、それは特殊な人たちです。
ポイントはまず「いくつかの」という言葉にあります。生活言語ではふつう、「いくつかの」は2つから6つくらいまでの少ない複数を意味することが多いでしょう。けれども数学では、「いくつかの」というのはひとつ以上、場合によっては0以上のあらゆる整数を意味します。したがって、ここで「いくつかの」と書かれていれば、円がひとつであっても条件1を満たします。
次に条件2はどう読み解けばいいのでしょう。数学では、「どの2つの円も異なる2点で交わっている」という文の「どの」は、「2つ以上円があるなら、そのどの2つの円も」という意味です。そして、2つ未満しか円がない場合、つまり円がひとつしかなければ、なんと「自動的に条件を満たす」ことになります。
同様に条件3の「どの3つの円も」は、「3つ以上の円があるなら、そのどの3つの円も」という意味です。したがって、3つ未満しか円がない場合、つまり円がひとつ、あるいは2つしかなければ、やはり「自動的に条件を満たす」のです。
よって、円がひとつしかない選択肢①は条件1、2、3のすべてを満たします。
円が2つある選択肢②、円が3つある選択肢③はどうでしょう。やはり条件1、2、3を満たしています。
残るは選択肢④ですが、上部の3つの円をよく見ると、右端と左端の円は「異なる2つの点で交わって」いません。したがって、「どの2つの円も異なる2点で交わっている」という条件2は当てはまりません。つまり問題で示された条件に当てはまらないのは選択肢④だけということになり、正解は選択肢①、②、③となります。
高校生だった私に、今の私がこのように説明したら、彼女はきっと目をつりあげてこう言うでしょう。「そんなこと、一度も教えてもらったことない‼」と。
腹を立てるのはもっともです。実際、私はこの読み方を教わった記憶がありません。私だけではないはずです。いろいろな場でこの問題を見せましたが、誰一人として解ける人がいませんでした。ごく例外的に大学で数学を学んだ人だけが解けるのです。
これはもはや知能や才能の壁ではありません。「言語」の壁です。
「どの2つ」といったら2つなければおかしい、というように強い違和感を抱く方はたくさんおられると思います。前回記事の「偶数問題」でも、「0はなにもないのだから、どうやって2人で分けるというのだ。0÷2=0などという式はそもそもおかしい」と納得できないままの方もいらっしゃるでしょう。
もしも「生活言語=学習言語」だったり、学習言語がひとつしかなかったりするなら、そのとおりだと思います。「それはおかしい」という意見に軍配が上がります。けれども、それぞれの分野の到達目標のために、生活言語の言葉を借りて、学習言語を生み出してきたと考えてみたらどうでしょうか。
数学では、「名づけ」のルールも生活言語や国語とは違います。小学3年生の算数に出てくる次の文章を読んでみてください。
「2つの辺の長さが等しい三角形を二等辺三角形という。また、3つの辺の長さがどれも等しい三角形を正三角形という」
では、お尋ねします。正三角形は二等辺三角形ですか?


