生産性を高めるため、人材の力を引き出すため、サプライチェーンを強化するため――。今、多様な理由で企業にとって立地戦略の重要性が高まっている。戦略を成功に導くために押さえておきたい最新情報をレポートする。

立地先が限られる状況の中で周到な計画や準備がいっそう重要に

企業の持続的な成長に大きな役割を果たす拠点の新設や移転。実際に今、企業はどのような動きを見せているのだろうか。「2024年工場立地動向調査」(経済産業省)によれば、2024年の立地件数は854件で前年と比較して55件の増加。また、立地面積は1982ヘクタールで前年と比較して438ヘクタールの増加という結果だった。

下のグラフのとおり、工場立地面積は近年増加傾向にある。感染症拡大や国際紛争などを契機とした事業活動の国内回帰の動きは依然として続いており、一方で海外の先端企業が高い技術力やノウハウを求めて日本に進出する例も見られる。その意味では、今後も国内での新規立地ニーズが維持される可能性は十分にあるだろう。

工場立地面積の推移
経済産業省「2024年(1月~12月)工場立地動向調査の結果について」より。

そうした中、企業が注視しなければならないのは「立地場所を見つけるのが難しくなっている」という現状だ。下のグラフのとおり、産業用地の分譲可能面積は長く減少傾向にあり、都市部でのオフィス需要も最近は堅調に推移している。自社に適した立地先を選定するに当たり、企業にはこれまで以上に周到な立地計画や先手の情報収集が求められているといえる。

分譲可能面積の推移
一般財団法人日本立地センター「産業用地ガイド」より作成。

地域の人材特性、人材動向の精査が立地戦略のポイントに

立地場所の選定に当たって何を重視するのか――。それは企業の経営戦略とも密接に関係している。下の表は、14年と24年の「工場立地動向調査」において、「立地地点選定理由」として「最も重要な理由」とされたものの上位をまとめたものだ。

立地地点選定理由として「最も重要な理由」
経済産業省「工場立地動向調査」より作成。

第1位はいずれも「本社・他の自社工場への近接性」である。拠点の近接性は、特にモノの移動がある場合、業務効率の向上につながる。また、オンラインでのコミュニケーションが増えたとはいえ、やはり物理的な距離の近さはコミュニケーションのしやすさ、意思決定のスピードアップなどに貢献する。その意味で、拠点の近接性は経営環境が変化する中にあっても、引き続き大事な観点といえるだろう。

一方で、近年重要度が増しているのが「人材・労働力の確保」だ。生産年齢人口が長期的に減少すると予測される中、人材確保はあらゆる企業にとって逃れられない課題である。

一口に人材といっても、歴史的な産業集積の状況、学校や研究機関の集積の状況などによって、その在り方は地域ごとに大きく異なる。また最近は、自治体などが人材の育成や交流に関わる取り組みに力を入れているケースも見られる。立地を検討している地域の人材特性、人材動向を精査することは、今、立地戦略の成否を左右する重要なポイントといえるだろう。

底堅い企業の立地意欲 確かなビジョンに基づく戦略策定を

今、企業の立地計画はどのような状況にあるのか。自社の計画を立案する上でも他社の動向は知っておきたい。

一般財団法人日本立地センターの「2024年度新規事業所立地計画に関する動向調査」によれば、事業拠点の立地計画が「ある」と回答した企業は21.3%。前年度から3.7ポイント減少したものの、「2021年度以降の高水準の状況は続いており、依然として企業の立地意欲は底堅いものと考えられる」と同調査はしている。

底堅さの理由としては、「①サプライチェーンの強化に伴う立地の促進」「②AIやデータセンターなど半導体分野(半導体製品・部素材・製造装置等)への積極投資」「③脱炭素(GX)・DXなどの分野における新たな投資」「④人材確保や働き方改革への対応」が挙げられている。②と③については、日本の高い技術力が生かされる分野だ。ものづくりにとどまらず、関連のサービスについても今後需要の伸びが期待され、事業所などの新規開設につながる可能性がある。

事業を取り巻く環境と同様、今、立地を取り巻く環境も変化している。企業は確かなビジョンに基づく立地戦略の策定がより重要になっていることを意識する必要がありそうだ。

さまざまな条件で調べられる産業用地検索サイト「METI土地ナビ」

オンラインで産業用地を検索できるサービスとして、経済産業省が提供する「METI土地ナビ」がある。都道府県名や住所はもちろん、利用可能面積、高速道路のインターチェンジまでの距離、工業用水道使用可能量など、さまざまな条件で用地を検索することが可能だ。
産業用地情報が分かりやすくまとめられ、自治体における企業誘致の取り組みや立地企業の声なども読めるので参考になる。
全国から条件に合う土地を探したい、選択肢を絞り込みたいなど、多様な目的に活用することができるだろう。