眼球が「伸びてしまう前」にブレーキを
さて、近視が厄介なのは、「よく見えない」という不便さやメガネやコンタクトレンズが必要になる点にとどまらないという点です。近視の程度が強いと、将来の白内障、網膜剥離、緑内障などのリスクが高まります。
近視の程度は、眼軸長と屈折度(D=ディオプトリー)で示されます。屈折度が高いほど眼球は前後に伸び、網膜が薄く引き伸ばされる状態になっています。弱度近視は屈折度-3Dより弱い近視で眼軸長24~25mmくらい。中等度近視は屈折度-3~-6Dで眼軸長25~26mmくらい、強度近視は屈折度-6~-8Dで眼軸長26~26.5mmくらいです。
緑内障は現在、日本人の40歳以上の20人に1人の割合ですが、近視になるとリスクが高まり、弱度近視でも発症率が約3倍に上昇するという報告があります。緑内障は治療をしても視野をもとに戻すことはできないため、何よりも予防が大切です。
一方で、お子さんの近視が進むと、「失明してしまうのでは」と不安になる親御さんもいますが、失明リスクが高いのは遺伝的背景の色濃い病的近視のケースです。環境要因を主体とした通常の近視の場合、生活改善と科学的根拠のある早期診断、早期治療で失明は最大限に防ぐことが可能ですので安心してくださいね。
スマホやゲームと「20‑20‑20ルール」
ここまで、近視のメカニズムについてお話してきましたが、重要なのは一度伸びてしまった眼軸長は元に戻ることはないということ。だからこそ「伸びてしまう前」にブレーキをかけることが肝心なのです。今日から自宅でできる対策もあるので、ぜひやってみてください。
まず、第1に生活習慣を見直しましょう。子どものデバイス利用を完全に絶てない時代だからこそ、「画面を大きく、距離を離して、時間を区切る」という対策が有効です。ゲームをするなら小さいスマホやゲーム機の画面ではなく、家庭のテレビにミラーリングして大画面で離れて遊ぶだけでも眼への負担は激減します。さらにトータルのスクリーンタイムは1時間程度に抑えてください。
スマホもゲーム機も画面をじっと見つめたまま、視線を動かさずに操作する子どもが多いですが、ときどき「目線を遠くへ移す」だけでも、近視抑制効果は大きくなります。20分近業を続けたら20秒間、20フィート(約6m)以上先を眺めてピントをリセットする「20‑20‑20ルール」を意識しましょう。


