②個人的な価値観をおしつけられたとき

赤ちゃん訪問では、個人的な価値観、精神論やスピリチュアル的なことを押し付けられたという声も少なくありません。単なる個人的な意見や感想も、自治体から派遣されてきた医療の国家資格を持った人に言われると、重く受け止めてしまいそうになりますよね。お子さんがかわいいから、また初めての育児でわからないことが多いから、なおさらです。

例えば、母乳育児ではなくミルク育児を選んだ母親に「もう少し母乳育児で頑張りましょうね」などと伝えるのは適切ではありません。医療者にできるのは、正しい情報を示すことだけです。母乳で育てるか育児用ミルクで育てるかは、当の母親が自分の気持ちや体調、価値観、環境などから判断することです。医療者が立ち入ることではありません。そして、いくら頑張っても母乳が出ない人は約1割いて、根性や自覚で分泌されるものではないのです。

赤ちゃん用ミルクを作る女性
写真=iStock.com/mapo
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このように個人的な領域に土足で踏み込まれた場合は、受け入れなくて大丈夫です。ご自身の選択を大切にしてください。もちろん、可能であれば「それは私が決めることですから口出しはやめてください」などとはっきり伝えてもいいでしょう。ただ、出産後は疲れていますし、産後うつになりやすい時期でもあるので無理はせず、その場では受け流して、あとで家族から苦情を伝えてもらってもいいと思います。

③「自然派育児」に傾倒した人が訪れたとき

医療関係者にも意外と「自然派」に傾倒する人は少なくありません。育児においては特に「自然」という言葉がもてはやされやすいのです。

でも、自然に任せると、子どもは病気になったり亡くなったりしやすいもの。今から約100年前の1920(大正9)年、乳児死亡率は人口千に対して200程度でした。これは1000人の子どものうちの200人近くが亡くなるという意味で、10人のうちの2人ですから恐ろしいことです。

一方、2023年の日本の乳児死亡率は人口1000に対して1.8で、日本は世界一赤ちゃんが死なない国になりました。その理由は、自然な育児をしたからではありません。むしろ、大正時代には抗菌薬もなく、今のような質のよいワクチンや育児用ミルクもなく、さまざまなものが自然に近く、手作りのものばかりだったのに乳児死亡率が高かったのです。日本の乳児死亡率が下がったのは、医療の進歩、ワクチンの普及、公衆衛生の向上、また周産期医療に関わるさまざまな人の努力があったからでしょう。

ですから、「なるべく自然なものでお手当てしたほうがいい」「薬は飲ませないほうがいい」「ワクチンは必要ない」などと言われたら、話を聞く必要さえありません。すぐに帰ってもらいましょう。