筑波大の監督が「シートに手書き」を課す理由

小井土は2025年度に向けて選手にシートを渡したばかりだという。

島沢優子『叱らない時代の指導術 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践』(NHK出版新書)
島沢優子『叱らない時代の指導術 主体性を伸ばすスポーツ現場の実践』(NHK出版新書)

「小井土にレポート出さなきゃ、じゃなくて、本当に自分の今の決意を宣言するつもりで書いてくれよ」

こういったシートの実践は中学、高校や大学など他チームでも聞くが、小井土は全員のシートに赤ペンを入れて返す。真のエースはどんな選手か? と疑問を投げたり、今年こそエースとしての仕事を! と、発破はっぱをかけたりする。

三笘が在籍したころの部員は180人。現在も約200人を数えるが、一人ひとりと丁寧に向き合う。シーズンに入って選手が悩んだり課題が見えたときは、このシートを振り返り「こんなこと書いてあるぞ」と一対一で話す。

「僕にとっては200分の1かもしれないけど、本人にとっては1分の1じゃないですか」

大事に扱う一枚をあえて手書きにする理由は3つ。1つはAIで出てきたものをコピー&ペーストできないように。2つめは、書いては消しゴムで消すという作業を重ねることで自分を見つめ直す時間になるようにするため。3つめは字に姿勢がにじむからだ。本気で取り組む学生は字が丁寧であることが多い。よく見ると「僕アナログ派なんで」という小井土の赤い字も達筆。三笘のシートも“美文字”だった。