筑波大の監督は三笘にどう声がけしたか
大学で壁にぶつかった三笘は、力を積み上げていくための場所を積極的に探した。例えば、筑波大准教授で110メートル障害元日本記録保持者の谷川聡に「個別に教えてほしい」と指導を仰いだ。谷川が改善ポイントとして挙げた中殿筋(尻の横の筋肉)の強化に取り組むと、スピードに緩急が加わった。急ストップし、急発進するアジリティ(敏捷性)に磨きをかけたのだ。
「一気に0から100を出せる選手は一定数いるが、100から0に止まれる選手はなかなかいない。彼のドリブルはぐっといこうとした瞬間に、相手が先に動いてしまうので、何もしない間に花道が開いている」
のちに三笘が所属した川崎フロンターレの監督鬼木達が雑誌のインタビューでこう評した高速ドリブルは、三笘が自ら谷川にアプローチして得た成果だった。三笘は渡英後も帰国すれば谷川のもとを訪れる。さらに現在コンディショニングを支える「チームみとま」のメディカル部門は、大学時代に訪れた茨城県つくば市内の治療院に任されている。
主体的に動く三笘を見てきた小井土は「いろんな情報を足を運んで取りに行く。誰か何か教えてくださいよと、決して受け身にならない。いろいろ試して、取捨選択して、自分を更新し続けたんだと思います」と少しだけ誇らしげに話した。そして「僕から何か出てくるかなと思って待ってても何もしてくれない。なら自分でやるしかないなと思ったのかもしれません」と自嘲気味に笑った。
大谷のような「未来ノート」を作っていた
個人的なアプローチはしなくとも、成長するための環境はしっかりと整備した。例えば、年度初めに部員と交換するセルフマネージメントシート。A4サイズ1枚の紙に「なりたい自分」「今の自分」「なりたい自分になるためにどうするか」などの項目を選手に書いてもらう。今の自分との乖離を考察させ、なりたい自分になるために、何をどうするのかという成長戦略を練らせて「いつまでに」とデッドラインまで設定させる。アスリートの成長戦略といえば、段階的な目標設定を単語で記した大谷翔平の曼陀羅シートが有名だが、「小井土シート」はより具体的に文章化しなくてはならない。


