任天堂が2014年3月期の収益計画として、本業での儲けを表す連結営業損益で1000億円の黒字転換を公約と言うべき「コミットメント」に据えた。13年3月期で364億円の営業赤字に陥った同社が打ち出した計画に対しては、多くの株式市場関係者らは「ハードルの高い公約」と手厳しい。しかし、同社の岩田聡社長は4月24日の決算発表記者会見で、「今期の収益計画の達成は可能」と豪語し、強気の姿勢を崩さない。

同社の公約実現の根拠の1つは、安倍晋三政権による経済政策「アベノミクス」による急速な円高修正の流れだ。実際、13年3月期で2期連続の営業赤字に陥った点を、岩田社長は「(期中の大半で推移した)超円高の影響が大きい」と振り返った。欧米を主戦場に、売上高に占める海外比率が7割に達する同社の収益構造からすれば、歴史的な超円高が重い足かせとなった点に一理はある。その意味で、昨年11月以降の円高修正の流れは、確かに収益改善に追い風となる。

日銀が打ち出した「異次元」の金融緩和は、円高修正の流れを一段と加速し、直近で1ドル=100円の円安も視野に入る。同社は14年3月期に想定為替レートを1ドル=90円、1ユーロ=120円に設定しており、期中に現状水準で為替相場が推移すれば、収益をさらに押し上げる可能性すらある。

為替相場という外部要因を抜きにしても、岩田社長が02年の就任以来、初めて手を染める経営陣の大幅刷新を6月に控えていることも、業績回復、公約実現に向けた自信につながっている。

しかし、大ヒットした据え置き型家庭用ゲーム機「Wii」の後継機として昨年11月に売り出した「Wii U」は、初年度550万台の販売計画に対し345万台。14年3月期も本業の苦戦は予断を許さない。ゲーム市場は、急速に普及するスマートフォン(高機能携帯電話)に侵食され、かつて「神話」と持て囃された、専用ゲーム機に専用ソフトで市場を伸ばす同社のビジネスモデルが神通力を失いつつあるのも疑いのない事実だ。

足元の円安基調は確かに強力な援軍だ。が、日銀の異次元緩和が息切れするような事態ともなれば、“公約”達成までは薄氷を踏むような道のりとなりそうだ。

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