あたふたしないためには、仕事の面に加え精神的な面においても備えが必要です。何があってもそこへいけば自分が癒やされる、いわば心のサンクチュアリを持っておきましょう。それはゴルフでも釣りでも何でもいい。子供や孫と接している時間がそうだという人もいるでしょう。いざというときの精神的な逃げ場を持っておくことも大切です。

以上のような前提を整えたうえで、実際に50代の人はどのように働くのがよいのかについて考えてみましょう。

“最後のご奉公”でやる気をアップ

出世の可能性がなくなっても会社に残るという人は、自分が会社の中でやりたかったがまだできていないことを、退職までの期間を考慮に入れながらやり遂げていくといいと思います。

たとえば職場の雰囲気が暗く、いろいろな問題が生じていて何とか是正すべきだと思うなら、自分が旗振り役になって職場改革に取り組んでみる。「こうなるといいな」と思っているテーマについて、会社への最後のご奉公として取り組んでいけばモチベーションも維持できます。

十分な貯金がある人は別ですが、定年後を見据えた準備も必要です。年金をもらえるまでにはタイムラグもあり、多くの人が働くことを希望するのが現実でしょう。

そこでの選択肢としては、大きく分けて熟年起業と再雇用があります。

熟年起業というと、ハードルが高いように聞こえるかもしれません。が、何も孫正義氏や柳井正氏のようなカリスマ経営者を目指す必要はない。自分の家族が生活できる分を稼げばいいのです。

いつか独立したい、一度は社長をやってみたい……。そう思っていた人は起業に向いています。60歳定年なら、55歳くらいから経験のたな卸しや起業の計画を練り始めましょう。拙著『60歳からの「熟年起業」』では具体的なケースや方法論を紹介しています。

ただし、成功確率は高くありません。相当のやる気と覚悟がある人でないとおすすめはできません。