この2冊に共通するのは、最初は英語で書かれた内容が、海外で評判になり、その後、日本語に訳された点です。当時の日本人は、対外的に「日本はこういう国ですよ」と自信を持って打ち出して、積極的に理解してもらいました。一時は日本人らしさを出してはいけないような雰囲気がありましたが、もうそういう時代ではない。海外で活動するには、日本人の骨格を意識して、それを他国よりも競争優位につなげることが、大事なのではないでしょうか。

大震災から1年経つこの時期(※雑誌掲載当時)だからこそ私がお勧めしたいのは、渋澤健著の『日本再起動』です。渋澤氏は、以前から、新しい日本づくりを現役世代で築きあげていく重要性を強く感じ、この本の中にも「次世代に今日より良い時代を遺すために、今出来ることをやろう」という想いが込められています。この思想の根底には、高祖父である渋沢栄一著の『論語と算盤』など、企業家を育成する精神を受け継いでいます。明るい日本社会を創っていく世代に、是非一読してほしいと思います。

デザイナーの発想が右脳に刺激を与える

『ネクスト・マーケット』C・K・プラハラード・著(英治出版)/『デザインのたくらみ』坂井直樹・著(トランスワールドジャパン)

ビジネス以外の視点を、仕事に生かすという意味では『デザインのたくらみ』を、弊社の社員にも勧めています。

この本は「いま、世の中にないものを作ることにデザインの役割がある」と言い切っている。世界有数の企業になったユニクロもナイキも、工場を持たない“デザイン会社”です。

著者の発想がユニークで、家の中を動き回れる1人乗りのEVといった斬新なコンセプトを生み出しています。1人乗りは発想できても、家の中まで縦横無尽に走り回るとは、なかなか思いつきません。デザイナーの発想に触れることで新しい気づきや視点を得られる。この本のビジュアルも素敵で、右脳が大いに刺激されます。