企業が年末調整を税理士に外注すれば、従業員1人分につき1000~2000円は税理報酬がかかる。100人分を2000円で依頼すれば20万円にもなる。社内でやるにせよ、かなりのコストであることは変わりない。企業は当たり前という感覚になっているかもしれないが、この負担は軽視できない。もっと大きい問題は、納税意識が希薄になることである。

納税に積極的になれない人でも、給与から天引きされてしまえば文句のいいようがないし、そもそもいくら天引きされているか、しっかりと把握できていない人も少なくないだろう。

たしかに源泉徴収で税金が天引きされ、年末調整で精算ができたら、会社員には申告の手続きが必要なく、手間はかからない。これはメリットといえるだろう。しかし、手間がかからないゆえに納税について意識する機会が持てない。結果的に、税金の使い道について真剣に考えることがない。

せめて確定申告だけでも各自が行ってはどうかと思うが、給与所得者は年末調整をしなくてはならないと定められている。所得税法194条などで給与所得者による扶養控除等の申告書の提出を規定しており、また同法190条で申告を受けた会社は年末調整しなくてはいけない、と決められているのだ。

年末調整は各種控除によりお金が戻るため、「年に1度の楽しみ」といった感覚を持ちがちだが、実際は月々、問答無用で多めに取られている税金を年末に返してもらっているだけ。自分の税金は自ら計算し、自らで納めるのが、本来の姿であり、政治参加意欲の点からは大きな要素である。自分で手続きしたい人はそれが認められるような制度にすることが望ましい。

医療費の自己負担額が年間10万円(または所得の5%)を超える場合に適用される医療費控除など、年末調整では手続きできない軽減措置などを利用できるチャンスがあれば、積極的に確定申告を行うことで、納税者としての意識を高めてみてはどうか。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
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