会議(写真上)、昼礼(下)は、門田氏を教授とする大学のゼミと講義のような雰囲気だ。

新しく開発された車が世に出るには、開発の段階ごとに、日産車としてクリアしなくてはいけない要件がいくつもある。その要件のクリアを目指して目標線を描き、毎週どこまで達成できているかを、誰にでもわかるように「見える化」した。

「他のプロジェクトでも、月例報告だとかいろいろなことをやっていますが、リーフはそれが必要ないんですよ。みんなが知っていますから。われわれのチームで誇れることがあるとすれば、透明性が非常に高いこと」。門田はこう胸を張る。

見える化によって、自分たちが今、開発のどこにいるのか、課題は何かが、お互いに明らかになる。それからの対応が門田の真骨頂だ。

「目標線に達していなくても、怒っちゃいけない、叱っちゃいけない。怒ると、そのうち担当がウソを言い始める。だから、見える化によって、遅れているのなら、遅れていることを顕在化させる。そして、どうすれば本来の目標線に近づくかを、各マネジャーと検討していく」

開発部隊の松尾恵美が、門田について面白い形容をしてくれた。「門田さんの指示は、“動詞”しかない気がします。『動け』とか、『いけ』とか。まずは登ってみろ、という感じですね。だったらこちらもダメ元でまずはやってみようかなという気持ちになる」。

見える化という論理的な方法を駆使しながら、常に前向きで明るく、部下たちをその気にさせる門田の個性が伝わってくる。

その門田がコミュニケーションの手段として、重視しているのが、冒頭に紹介した昼礼である。昼礼は、毎週火曜日の午後一番に開かれ、門田がその一週間にあった重要なことを伝える。「例えばゴーンさんとか、志賀(俊之COO)さんとか、トップがこの車についてなんと言っていたか、その思いについては、かなり伝えましたね」。

浅沼が言う。「プロジェクト以外の出来事でも、こういうことがあったと情報を流してくれます。それを前提に、こう動きなさいよ、と指導してくれる。それに見える化を推進して課題のリストをつくり、みなが見えるようにする。同じ目的のためにみなが取り組むやり方を非常に重視する方です」。