静岡県の川勝平太知事が4月2日、突然辞意を表明した。なぜ任期半ばで知事職を放り投げるのか。ジャーナリストの小林一哉さんは「会見では『リニア問題に区切りがついた』と説明したが、それは真っ赤な嘘だ」という――。

「リニア問題の解決」が最大の選挙公約だった

川勝平太知事の4月2日夕方の突然の辞意表明は、静岡県だけでなく、日本全国を驚かせた。その驚きのまま、翌日の3日午後、急遽、静岡県庁で記者会見が開かれた。

辞職理由について会見する川勝知事(静岡県庁で4月3日)
筆者撮影
辞職理由について会見する川勝知事(静岡県庁で4月3日)

その席で、川勝知事は、辞意表明のきっかけから理由に至るまで、内容の全くない空疎な説明を繰り返した。

リニア問題の解決を4期目の最大の選挙公約に掲げて、当選を果たしたはずなのに、任期半ばで知事職を辞す大きな理由に、「リニア問題は大きな区切りを迎えた。これが一番大きい」などとうそぶいた。

「リニア問題に区切りがついた」という真っ赤な嘘が、知事会見の内容のない空疎さの象徴となった。

川勝知事の狙いは「静岡空港新駅の設置」

もともと川勝知事の腹の中では、リニア問題の解決とは、東海道新幹線「静岡空港新駅」設置をJR東海に約束させることと結びついていた。

静岡空港新駅の設置がリニア問題の落としどころと考えていたのだ。

そのために2018年夏から、「大井川流域の命の水を守る」「南アルプスの自然環境保全」をテーマにした2つの専門部会を設けて、JR東海との『対話』を始めた。

当初、川勝知事は記者会見などで「JR東海は誠意を示せ」と何度も強い口調で繰り返した。

知事側が具体的な手の内を見せていなくても、JR東海には何を求めているのかちゃんとわかっていた。

ところが、前知事時代からの悲願でもある静岡空港新駅の設置について、JR東海は当初から聞く耳を一切、持たなかった。