テレワークで移住・定住を増やせるか

一方で、言うまでもなく全国の自治体は移住者を欲しがっています。

少子化による人口減少、ことに20代からの若者世代の減少は全国各地で著しいわけですから、どこの自治体でも子育て支援や移住者支援制度をつくって、移住者を呼び込んでいます。

となると、前述のような「移住したい人たち」の受け皿になることを考えないといけません。

いかに都心から1.5時間圏内が人気とはいっても、遠隔地の自治体が「東京の隣に引っ越す」ことは無理なのですから、別の方法でこのエリアがもっている魅力=仕事を生み出さないといけないでしょう。

そこで注目されるのが「テレワーク」です。

現在全国のいくつかの自治体が、弊社と組んで「テレワークを市民に定着させて移住定住人口を増やそう」という取り組みをしています。

実際にテレワークを使うと、どんな形で移住生活を送れるのでしょうか。

往復3時間以上かかる広告代理店を退職

茨城県境町に住む30代の新井岳さんの事例を紹介したいと思います。

新井さんは2022年の春までは、都内にある大手企業のハウスエージェンシーで働いていました。

そのときは実家のある茨城県古河市から、往復3時間以上をかけて通勤していました。

それが、いまは酪農とテレワークの二足のわらじを履きながら、ほどよい田舎暮らしを楽しんでいます。

住居から牛舎までは車で10分。

通勤時間が減った分昼寝もできるし、肉体労働がほどよい運動となっているそうです。

毎回バランスのいい食事が家でとれるので、身体も引き締まり健康状態もよくなったと笑顔で語ります。

新井さんの1日はまず、朝5時半に起きて牛舎の掃除や餌やりからスタートします。

搾乳は7時から8時半ごろまで。

その後テレワークにとりかかり、昼寝などもして、16時から19時ごろまでまた牛の世話をして1日が終わります。

牧場の牛舎で餌を食べる牛
写真=iStock.com/okimo
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