日本の演劇やコンサートで「注釈付きS席」の販売が目立つようになっている。日本女子大学の細川幸一教授は「販売時に『ステージの演出が見えづらい』などと注釈をつけているが、S席と料金が同じなのは不誠実ではないか」という――。
劇場の通路階段と椅子
写真=iStock.com/SamBurt
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最近よく見かける「注釈付きS席」とは何か

コロナ禍もほぼ過ぎ、コンサート会場、劇場などでは数年ぶりに自由な生活を取り戻し、娯楽を楽しむ人を多く見かける。ただ、人気が高まれば高まるほど、映画と違ってステージパフォーマンスはチケットを取りづらくなる。

チケット不正転売禁止法が施行されているが、ネットでは高額転売と思われ取引がいまだに見受けられる。これはチケットを欲しくても取れない人がいるからで、正規の料金でチケットが取れればこうした取引はなくなるはずだ。すなわち、人気があれば、売り手市場になりやすいのだ。

そうした背景もあってか、最近「注釈付きS席」なる席種がコンサートやミュージカルなどで見受けられるようになった。一体これは何なのだろうか?

これも日本特有の「名ばかりS席」と同じ

席種は、多くのコンサートや劇場においてS席、A席、B席などの格付けをしている場合がほとんどだ。S席はspecial、すなわち特別席あるいは最良席を意味する。

以前、プレジデントオンライン「日本特有の『名ばかりS席』を許してはいけない…消費者法の専門家がエンタメ業界の悪慣習に怒るワケ」で「名ばかりS席」の問題を指摘したが、S席に注釈がついた「注釈付きS席」という席種が設けられることがある。価格はS席と同じであることが多い。

「注釈付きS席」とは、どのような席だろうか。

2023年4月の東京池袋・東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で行われた舞台「サンソン ルイ16世の首をねた男」を例にあげよう。

東京建物Brillia HALLの外観
東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)(画像=Kachi-lan/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons