超円安に物価高――。2024年から始まった「新NISA」を攻略し、資産を拡大させる秘訣を世界3大投資家のジム・ロジャーズが初公開する。「プレジデント」(2024年2月2日号)の特集「金持ち家族 貧乏家族」より、記事の一部をお届けします――。

2024年の世界経済 私はこう予測する

日本の株式市場は、1989年12月に史上最高値を記録しましたが、その後は長い間、下落が続いていました。ところが、2013年になってようやく上昇に転じ、いま30年以上前の最高値に近づいています。日本の株式市場が復活した理由は主に2つあります。

一つは中央銀行である日本銀行がETF(上場投資信託)を買い始めたことです。日銀によるETFの買い入れは10年に始まりましたが、13年4月には「量的・質的金融緩和」が導入され、日銀によるETF保有残高を年間1兆円増やすことが決まりました。その後も買い入れ額は増加していったのです。

もう一つは、税制優遇制度の導入です。政府は国民にも株式を買わせるため、14年にNISA(少額投資非課税制度)を導入しました。こうした税制優遇措置は、日本独自のものではありません。多くの国で導入されています。目的は、国民に株式を買わせて株価を上昇させるためですが、大概の場合、成功しています。

そして日本では、24年から新NISAがスタートし、非課税枠が広がりました。加えて日銀には、ETFを購入する余力がまだ残っています。よって、日経平均株価は遠からず4万円を突破する可能性があると考えています。

ただ私は、24年以降の世界情勢を楽観視していません。日経平均が最高値を更新したとしても、以前のように日本人の誰もがお金持ちになり、幸せになれるとは思っていません。

では、24年以降の世界経済はどうなるのでしょうか。私は非常に大きな問題が発生すると予測しています。

さまざまな報道を見ていると、世界中で多くの人が不満を抱えていることがわかります。それは今後も増えていくでしょう。この問題をいかに早く解決するかが課題ですが、各国の中央銀行や政治家にとっては、非常に難題です。簡単に解決できる唯一の方法は、借金をし続け、お金をばらまくことです。ただし、この方法による効果は長く続きません。一時的には問題を解決するかもしれませんが、その後は非常に大きな痛みが伴うでしょう。そして、世界中の国々は経済的に大きく衰退するはずです。25〜27年には世界中にとても不幸な国民があふれると考えています。

不幸に陥った国民は、不満を募らせます。すると政治家は、外国人に責任を転嫁します。たとえば、トランプ氏は米国のすべての問題の責任を外国人に転嫁しました。見た目や文化の違う外国人に問題を押し付けるのは簡単だからです。国民の不満は貿易戦争に発展し、さらには銃撃を伴う戦争に発展してしまう可能性もあります。人々は歴史の教訓を全く生かすことができません。銃撃戦が始まったら、ひどいことになります。私が日本政府の責任者だったら、できるだけその戦争からは自国を遠ざけようとするでしょう。日本では人口が減っており、若者も非常に少なくなっています。戦争で戦える兵隊も限られています。その意味でも、日本政府はもっと24年以降の世界情勢を心配するべきです。

PRESIDENT 2024年2.2号

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