「役員の出席によって会議が混乱するのは、運営者とのあいだでゴールが共有できていないからです。ダメな会議はアジェンダや目的があっても、終了時にどのような状態になっているのが理想なのかというゴールがない。そのため『売り上げを伸ばすため』という目的を共有していても、人によって着地点がまったく異なるものになってしまう。まずはゴールを設定し、役員と運営者で事前にすりあわせておく必要があります」(寺沢氏)

ゴールと同時に共有化したいのが、会議のグラウンドルールだ。

「サッカーの試合は、『手を使ってはいけない』というルールが守られてはじめて試合が成立します。ルールが必要なのは会議も同じ。例えば『話は2分以内に』『否定的な意見を述べるときは提案とセットにする』といったルールを事前に周知しておけば、役員の暴走も防ぎやすいのではないでしょうか」(寺沢氏)

ただし、暗黙の了解レベルの共有では、審判である進行役もイエローカードを出しづらい。事前にホワイトボードに書いたり壁に貼りだすなど見える位置に掲示して、いつでもルールに立ち戻れる環境を整えておきたい。

それでも役員の暴走が止まらなければどうすべきか。検討してほしいのが会議の分割だ。一般的に会議は「共鳴」「発見」「合意」の3つのプロセスに分けられる。共鳴は、出席者がテーマについて情報を共有し、さらに一人一人が自分のものとして関わるプロセスを指す。発見はテーマに関するアイデアが十分に生み出され共有されるプロセス、合意は具体策が意思決定され、各自が納得して準備に入るまでのプロセスだ。

「このうち経営の上流が参加する意味のあるのは、方針やビジョンを語る共鳴のプロセスと、決裁を下す合意のプロセスだけ。アイデア出しである発見のプロセスでは、おそらく役員がいないほうが議論は活発になるでしょう。3つのプロセスを複数回の会議に分けて行ってもいいし、一つの会議内で時間を区切って行ってもいい。あるいは報告、ディスカッション、成功体験の共有といったゴールごとに会議を分割してもいいでしょう。いずれにしても役員には必要な個所だけ参加してもらえば用が足りるはずです」(寺沢氏)

これまで役員に大人しくしてもらうための方法を見てきたが、より本質的な問題が残っている。運営者である中間管理職のオーナーシップだ。