とはいえB社の営業会議は、案件の進捗状況の報告にほとんどの時間が費やされる。マルチ形式は報告型会議にそぐわない気がするが、それもやり方しだいだという。

「過去情報の共有は会議の前に済ませておけばいいのです。貴重な時間を、単なる報告に費やすのはもったいない。報告する内容は各自が事前に共有フォルダなどにアップして、会議の前に全員が目を通すべきです。そうすれば会議の時間を短縮できるだけでなく、報告内容を前提とした有意義な議論ができる」(寺沢氏)

ただ、事前の情報共有は会議から無駄を省く工夫の一つにすぎない。出席者の参加意識を高めるためには、もうひとひねり必要だ。

「事前に資料に目を通す習慣が定着したら、次はそれに対するコメントや質問を出席者一人一人に発表させるといいでしょう。例えば『この顧客なら他の商品を勧めたほうがいいのではないか』『キーマンを口説き落とすのに、どのような手段を使ったのか』といったコメントや質問を部下同士でぶつけてもらうのです。自ら質問やコメントを考えれば、他人の案件も自分のものとして捉えられるはず。最初は遠慮してコメントが出づらいかもしれませんが、いいコメントや質問を積極的に褒めたりして、自由に議論ができる雰囲気づくりをしてください」(寺沢氏)

B社の会議には、沈滞ムードが漂う原因がもう一つある。進行役の上司に叱られる回数がもっとも多いという高畑さんは、会議の様子をこう振り返ってくれた。

「営業成績が落ちたからといって、罵倒されるわけではないんです。ただ、『なぜできないんだ』『原因は何だ』と冷静に畳みかけられると、何も言えなくなってしまう。順番に一人一人吊るしあげられていくので、会議が終わると、みんな精神的にグッタリ。しばらく何もする気が起きなくなります」