「常識がない」と決めつけてはいけない

おそらくこれまでの会社員としての普通の感覚からすると、入社直後に「転職」という言葉を口に出すのは、次のようなさまざまな裏の解釈を想起させることが考えられます。

「私は何かあったらいつでも転職するつもりでいます」
「私は最初から会社に期待していません(状況によっては、ほかに移るつもりです)」
伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)
伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)

以前でしたら、「転職の話イコールそのような姿勢を含んでいる」と周囲に解釈されてもおかしくはありませんでした。「今年の新人の中には、とんでもないヤツがいるぞ」と社内が騒然とすることも十分考えられました。しかし、転職のことも単なる情報収集の一環と考えている新入社員には、そうしたネガティブな思いはありません。

むしろ管理職や研修講師なら豊富な経験を持っているはずだろうから、実態を踏まえた有効な情報が得られそうだと、ポジティブな考えを持っているくらいです。ただし、これは最近の若手社員は「常識がない」「場の空気が読めない」ともとらえられる一方で、従来とは異なる意識と価値観を持っているともとらえられます。その現実をしっかりと受けとめることができれば、彼らに対して否定的な感情を抱くこともなくなります。

気持ちがわからなければ、直接聞けばいい

さらに付け加えると、最近の若手社員は発せられた言葉の意味を表面的にとらえる傾向があり、二次的な意味を包括的に解釈することが難しいことも知っておいてください。

たとえば、言葉の意味の受けとめ方も、若手社員はストレートです。若手社員に対して「頑張って」という言葉をかけた場合、そのまま「まだまだ頑張りが足りない」という意味で受けとめます。たとえ上司が、その言葉の裏に「君には伸びしろがある」「大きな可能性を感じている」という思いを含めていたとしても、若手社員には伝わりづらいのが現実です。

上司世代にとって「頑張って」は、さらなる期待を込めた言葉ですが、最近の若手の受けとめ方を理解して発言する必要があります。この話をするたびに、私は上司、先輩たちが発する言葉を思い出します。

「若手社員が何を考えているのかわからない」
「若手社員の本心が見えない」
「若手社員にこちらの気持ちが伝わっていないように感じる」

こうした声は、若手社員への指導や教育に関する研修を実施するための事前のアンケートで必ずと言っていいほど、しかも多くの上司から寄せられます。では若手が何を考えているのか、本心ではどう思っているのか、こちらの気持ちが届いているのかを上司からストレートに質問してみたのかどうかを確かめると、それはしていないという場合がほとんどです。つまり、核心には触れずに若手の表面的な表情や態度から何とか探り出そうとしているわけです。

それでは、若手社員の本当の心の中はつかめません。「先輩の背中を見ろ」「先輩から盗め」という考え方はもはや通用しません。同様に若手社員にも、もっと直接的で具体的な言葉のやりとりで相互理解を図らなければならないのです。

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