2回倒れても働き方を変えなかったBさん

他のクライエントの50代後半の女性Bさんは、昨年、めまいで倒れたことをきっかけに、毎晩2時3時まで働く生活に疑問を持つようになりました。

しかし、自分の任されている業務を部下たちにはなかなか割り振らず、疑問を持ち続けながらも働き続けました。そして、数カ月後、まためまいで倒れ救急車で運ばれてしまいました。産業医面談では、部下たちに仕事を譲渡することを提案しましたが、

「任せる人がいない。クライエントは“私”を指名してくる」が口癖でした。自分の気分転換よりも、仕事が優先なのは当然のこととして、なかなか気分転換に時間を割く提案も聞いてもらえませんでした。

このプロ意識と頑固さがあるがゆえに、Bさんはこの会社で長い期間この役職を務めてこられたことは容易に想像できました。

Bさんはその後も産業医面談には定期的に来てくれました。やはり、自分の体調のことは心配だし、内心どこかで今の働き方を変えないといけないことはわかっている、しかしそれを実践できていない自分がもどかしい、という印象を受けながら、1年間ほど産業医面談は続きました。趣味を作ることの大切さは理解してくれたものの、「時間がない」を理由に、なかなか実践できないでいました。

膝に手を組んでソファに座る女性
写真=iStock.com/fizkes
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「転職活動」を機にプレッシャーが薄れた

すると、ある日面談をしていると突然、「私、今、転職活動をしています。決まったら退職する予定です。上司にもそう伝えました」と教えてくれました。決めた日以降、夜中まで働かなければというプレッシャーが少し薄れ、最近は24時前には仕事を終えているようです。次はもう少し労働時間が緩い会社に勤め、定年後に向けて趣味を作りたいと思います。というBさんの言葉に、産業医面談を続けてきた私は、嬉しく思いました。

この先Bさんがどうなるのかは、私にはわかりません。しかし、本人なりに1年間悩んで決めた結論です。いい方向に向かってくれると信じています。