「お金」以外に働く理由がない人は“もろい”

50代になっても外資系企業で働いているということは、社内ではそれなりの役職です。その会社(または業界)でも長く働いてきており、経済的には恵まれた状態で、単にお金のために働き続けなければならない人は少ないです。そのような“恵まれているはず”の社員たちのこのような面談が、コロナ明けから増えてきました。

「どうして働くのですか? どうして、ここまで忙しいこの会社で働き続けるのですか?」

私は、この質問をよく社員に投げかけます。キャリアややりがい、具体的な目標や理由など、お金のため以外の答えを持っている人は、タフでハードな環境の中でもレジリエンス高くやっていけることが多いです。反対に、(生活のための)お金くらいの答えしかない方のメンタルは“もろい”ことを私は経験から知っています。

硬貨を積み重ねるビジネスマンの手
写真=iStock.com/acilo
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コロナの3年間で価値観が大きく変わった人がいる

新型コロナ感染症の流行があった3年間、私たちは、過去に感じたことのない不安や恐怖を経験してきました。また、この3年間、在宅勤務や出社勤務など会社に言われるがままに働きつつも、いろいろと思うところがあった人は多いと思います。自分では気が付かない間に、自分の価値観が変わった人がいても不思議ではありません。

そして、新型コロナ感染症の流行が終焉しゅうえんした現在、自分の新しい価値観と従来の働き方が、必ずしもマッチしていない人がでてきました。その人たちが、さまざまなきっかけで、仕事へのエネルギーの衰えに気がついたり、今の働き方に疑問を持つようになったのです。

おそらくAさんも価値観が変わり、昔のようにハードに働くことへの違和感を抱いているのではないかと感じます。そこに、自分には仕事以外何もないという現実を感じてショックを受けているのでしょう。コロナ禍の3年間はそういうことを考えずに頑張ってきたのですが、コロナが明けて、普通の生活に戻ったあと、ふとしたきっかけで違和感に気付いたものの、まだご自身で消化しきれていないのかと思われました。