「合格者」と「入学者」は違う

「ギリギリの成績で合格しても、入学後についていけなくて大変そうなので、偏差値に余裕のある学校を受けたほうがいいでしょうか」

よくあるこの質問について、中学入試の特徴から説明します。

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中学入試は、一人で複数回受験し、複数の学校に合格します。以前、願書を出した学校すべてを受験し、1月入試や午前午後入試を含めて11の学校に合格した子もいました。

仮に、偏差値60の学校があり、合格する子は偏差値52~68だとします。偏差値60で合格した子は、入学後は真ん中の成績になると思いきや、実際は上位のことが多いです。なぜなら、中学入試は一人で何校も受験できるため「偏差値の高い生徒は、より上位の中学に進学するケースが多い」からです。合格者と入学者の偏差値には差があるのです。

合格者がどんな成績でも、シンプルに「その学校に合格するだけの力があった」ということなので「入ってからついていけるかどうか」という悩みの先取りをする必要はありません。

「入試の特徴」は「学校の特徴」と似る

もう一つ、「合格=その学校に合っている」証拠です。

授業で論文を書かせる中学校は入試でも記述の出題が多く、理科の実験観察を重視する中学校は実験観察に関する問題が多く出題されます。また、基本問題を中心に出題する学校は、学習指導がていねいに進みます。これが、「入試問題は学校の顔」とも言われる所以です。

冒頭のような悩みが出てくるのは、合格への不安と戦っているタイミングでしょうから、以下のような志望校の入試問題の傾向を、落ち着いて分析してみるのもいいでしょう。

・基本問題がほとんどだが、合格最低点が高い VS 難問が多いが、合格最低点が低い
・得意教科があれば、大きく差がつく VS 4教科のバランス重視(4教科の配点が同じ)など
・問題数が多く、スピード勝負 VS 問題数が少なく、途中点の稼ぎかた勝負

というふうに、特徴が正反対の学校がたくさんあります。配点も制限時間も問題傾向も、千差万別です。先述の通り、入試の特徴は学校の特徴と似る傾向があるので、合格したら「入学後なんとかなる、なんとでもなる」と思ってください。

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