営業畑でやたらと連呼される「いまいま」「すぐすぐ」

最近、営業畑でやたらと連呼される畳語をご存じでしょうか。「いまいま」と「すぐすぐ」です。実際、わたしもこんな営業電話に出くわしたことがあります。

一聴すると、「『いま』という時間軸の中でのこの『瞬間』」、

「はじめて電話する者です! いまいまお時間はございますか?」(広告代理店の営業)

「ええ、矢野さんにはすぐすぐにご検討をお願いしたいと思いまして連絡をいたしました!」(求人媒体の営業)

「『すぐ』という時間軸の中でのこの『瞬間』」といった意味で使われていそうです。そう考えると、先の3に相当するのでしょう。でも、本当にそうでしょうか。ここで立ち止まって考えてみましょう。

これらの畳語が向けられている対象は顧客(顧客候補)、すなわち、営業担当が下手したてに出るべき人間です。つまり、「いまいま」「すぐすぐ」が強調を表すなら、それは相手をかしているような響きを持つことになり、相手に対して無礼なことばになってしまいます。わたしはこれらの畳語には「縮小義」の働きがあるのではないかとにらんでいます。「縮小義」とは「弱意化」のことです。

矢野耕平『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)
矢野耕平『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)

主に宮崎県、鹿児島県で使用されている方言で「てげ」という表現があります。「大概、たいそう、ずいぶん、かなり」を意味します。たとえば、「てげねみぃ」とは「とても眠い」ということ。ところが、「てげ」が畳語化し「てげてげ」になると、途端に縮小義となるのです。たとえば、「あの人はてげてげやもんね」と言えば、「あの人は適当だからね」という意味となります。「てげてげ」とは「適当、だいたい、ほどほど」を表します。

話を戻しましょう。先の「いまいま」「すぐすぐ」という畳語はこの「てげてげ」と同様の働き、すなわち「縮小義」となるのではないでしょうか。先の例文を言い換えてみましょう。

「はじめて電話する者です! お忙しいとは思うのですが、ほんの少し『いま』というお時間をお借りできませんか」

「ええ、矢野さんには『すぐ』動いてもらうのは難しいかもしれませんが、もしよろしければお早めにご検討をお願いしたいと思いまして……」

このように、「いまいま」も「すぐすぐ」も相手(顧客)に対しての配慮を働かせる「縮小義」の役割があるのだとわたしは考えます。そう分析すると、営業畑でこの手の畳語が生まれやすいことにも合点がいきます。

日常生活の中で新鮮な響きを持つ畳語に出会ったら、そこには一体どのような意味が込められ、効果を生み出しているのかをじっくり考えるのも楽しいかもしれませんね。

※冒頭の入試問題の解答 ア 3 イ 2 ウ 4

吹き出しに書かれた「いまいまお時間はございますか?」の文字
イラスト=iStock.com/calvindexter
※イラストはイメージです
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