そして、そのネガティブな気持ちが続いてしまうことで、心や体にさまざまな悪影響が出てきてしまいます。たとえば、気持ちを抑え込みがちな人は疾患による死亡リスクが30%高まってしまい、がんになる確率も70%上がるという驚きの報告があるくらいです。

そのため、ネガティブな気持ちを無理やり忘れさせたり、抑え込ませたりするのではなくて、ネガティブとのうまい付き合い方を子どもに教えていかなくてはいけません。

私たち人間はネガティブな気持ちになっている自分を見つめ、その自分を受け入れたときに、その自分を変える準備が整うのです。この本質を、臨床心理学の歴史においてフロイトと並ぶ偉業を成し遂げたカール・ロジャースは以下のように述べています。

興味深いパラドックスがある。それは、ありのままの現在の自分を受け入れるとき、自分が変わるということだ。

子供に身につけさせるべき自己肯定感とは

そしてここでカール・ロジャースが言う「ありのままの現在の自分を受け入れる」というのが、子どもが持つべき自己肯定感のカギになります。

父と母と娘が川で遊ぶ
写真=iStock.com/Hakase_
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外発的報酬に依存した「成功体験」からの自己肯定子育てはダメ。ネガティブな気持ちを無理に忘れさせようとするのもダメ。それなら、いったいどんな自己肯定感を育んでいけばいいのか?

それはシンプルにまとめると、現実の自分をありがたく思う気持ちです。この自己肯定感の定義には2つの重要な要素が含まれています。それは「自己受容(Self-acceptance)」と「自己価値(Self-worth)」です。

まず、1つ目の「自己受容」は、まさしくカール・ロジャースの「ありのままの現在の自分を受け入れる」と表現した気持ちのこと。ポジティブな自分もネガティブな自分も、ありのままを受け入れる。そうした自己受容ができる人は、精神的に安定していて、幸福感が高い。逆にそうでないと、ストレスが高く、うつ病のリスクが高まることなどがわかっています。

また、自己受容感の高い人の方が、ストレスマネジメントのトレーニングで、メンタル強化の効果が高くなりやすいとか、けがの治療の効き目や体の回復のスピードが速い、寿命が延びるなどの報告もあります。

つまり、自己受容感が高いと心にも体にも良い影響があるのです。