「頭のいい子」を育てるにはどうすればいいのか。スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星友啓さんは「知能アップに最も効果的なのは、子供のメンタルを強くすることだ。世間では『自己肯定感を高めるべき』という言説があふれているが、親が子をやたらと褒めると、むしろメンタルが弱くなる恐れがある」という――。

※本稿は、星友啓『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(SB新書)の一部を再編集したものです。

小学校の建物の教室で手を挙げて質問したり答えたりしている男女の小学生のグループの背面図。
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メンタルの強い子供は「頭のいい子」に育つ

難しいことに直面したときでも、前向きに、辛抱強く生きていってほしい。

先が読めない現代社会で、やはりメンタルが一番大事。

そんな親心にお応えするため、この章では、子どものメンタルを強くする科学的なアプローチについて解説していきます。

まずお伝えしたいのは、子どものメンタルを強くすることが、子どもの知能をアップするのに最も効果的だということです。この事実はこれまで心理学や脳科学の分野で確認されてきました。

その中でもメンタルと学業の関係が現場レベルで最も明確に示されたのが、アメリカで盛んな「SEL」研究です。

「SEL」は「Social Emotional Learning」の頭文字を取った略語。目的は、子どもたちの社会性(social)を育み、感情(emotional)の認識やコントロールのスキルを身につけさせることです。アメリカの教育界ではSELの名の下に、子どもたちの心と社会性の発達を科学的にサポートするプログラムの研究開発が進んできています。

その火付け役となったのがイェール大学の研究です。学校のカリキュラムに、社会性や感情をサポートするプログラムを導入したところ、子どものメンタルを強化できただけでなく、学業成績が大幅に上がったのです。

このイェール大学の研究を皮切りに同様な報告が現在までに数々積み重ねられてきました。さらに、これはアメリカ特有の効果ではなく、文化によらないことも最近になって解明されてきました。SELのプログラムの投資利益率(ROI)を計算してみると、元手の20倍という試算もあるくらいです。

つまり、一言で言えば、メンタルサポートは学力サポートなのです!

むやみに自己肯定感を高めようとしてはいけない

まず、子どもの「自己肯定感」について解説していきましょう。

ちまたには、自己肯定感について教える本や動画があふれており、こちらとあちらで真逆のことが書かれているなんていうことがしばしば起こります。そして、その中には、厳重注意の「ダメ子育て」も含まれているので、子どもに、むやみやたらな自己肯定をすすめてはいけません。

自己肯定の仕方によっては、子どものメンタルに逆効果になってしまいます。そこで先に、ちまたでよく見かける、危険な自己肯定感のアップ法について見ていきましょう。